商社の仕事人(14)その2

2017年04月11日

ダイワボウ情報システム 重本和希

 

あらゆる業種業態と関わりながら

ITの可能性を追求する

 

 

フレッシュさを逆手に取りピンチをくぐり抜ける

様々な企業に対して、情報システムの開発におけるコンサルティングから設計、開発、運用・保守・管理までを一括請負するH社。このH社に対して、パソコンをはじめとするIT関連商材を提案するのが重本の役割だった。単にITの知識を詰め込んでも仕事にはならない。まずはH社とH社にとっての顧客がどのような業務を行っていて、そこに対して必要となるIT関連商材が何なのかを理解しなければならなかった。

「今考えてみても、当時の記憶がぼんやりとかすんでいてなかなか思い出せないんです。それだけ忙しくて、ハードで、自分の容量を超えるような重圧がかかっていたのだと思います。はっきり言って、H社にとってはダイワボウじゃなくてもいい。他にもディストリビューターはあるわけで、それまでは前任の先輩が構築した信頼関係があったからこそ〝だからダイワボウを選ぶ〟という選択をされていたわけです。それがなくなり、やってきたのは自分のようなワケの分っていなさそうな若造ですからね(笑)。H社から関係を切られても仕方がない状況でした」

それでも、重本は何とかこの〝機会〟をものにしようと自分を奮い立たせた。当時、同期入社の仲間たちは先輩の事務処理等をこなしながら仕事の基礎を学んでいる〝下積み中〟で、誰一人として担当を任されて営業に出ている者はいなかった。イレギュラーな出来事とはいえ、重本は同期の中で一番に独り立ちできたわけだ。

「当時、他の先輩方がこう言ってくれました。〝今のお前が武器にできるのは、フレッシュさだよ。まだ何も分からないということを逆手にとって、素直にどんどん相手にぶつかっていけ。もし何かあっても、俺たちがケツをふいてやるよ〟。こんな風に言われたら、もうウジウジ考えていないでヤルしかないですよね。その日から、H社に通う日々が始まりました。相手の反応ですか? 〝おう! これからよろしくな!〟などと温かく迎えてくれるわけがありません(笑)。きちんと名刺交換はしていただきましたが、皆さん、目がまったく笑っていない。役立たずの新人が来たか、という感じでしょうか。無理もありませんよね」

それでも、〝自分の売りはフレッシュさだ〟と言い聞かせ、H社に通い続けた。当然、高度な提案ができるわけではない重本が毎日社内をウロウロしていたのでは、返って迷惑になる。そこで、毎週水曜日には朝イチでH社に〝出社〟して、最後のひとりが退社するまで居続けた。〝水曜日はいつもアイツがいるな〟と印象付けるための作戦だ。H社の新入社員を見つけて少しずつ距離を縮め、必要としているIT商材などの情報を収集した。ベテランの社員の手が空いている瞬間を見計らい、分からないことをどんどん質問して懐に飛び込み、ニーズの分析に役立てた。

「商品知識や提案力が追い付かないなら、〝人間力〟で勝負するしかない。H社から頼まれたことは素早く確実に処理するよう心がけました。おかげで、何とか受け入れてもらうことができて、先輩が築き上げた数字も落とさずに済みました。やるしかない状況になったら、やれるものだと実感しましたね」

⇒〈その3〉へ続く

 


関連するニュース

商社 2024年度版「好評発売中!!」

商社 2024年度版
インタビュー インターン

兼松

トラスコ中山

ユアサ商事

体験