商社の仕事人(69)その1

2018年11月26日

三谷商事 鳴海賢一

 

自分一人ではなく、

仲間と一緒に成長していく!

 

 

【略歴】
鳴海賢一(なるみ・けんいち)
1981年、北海道札幌市生まれ。早稲田大学教育学部卒。2004年入社。

 

高校野球での教訓

2016年夏、鳴海賢一は甲子園のアルプススタンドにいた。

全国高校野球選手権大会決勝。作新学院対北海高校。スタンドには、高校時代ともに汗を流した仲間、先輩、後輩たちの多くが顔を揃えていた。

「悲願である全国制覇の瞬間をこの目で見たい!」

思いは1つ。気温は35度を超える猛暑だったが、スタンドにはそれ以上の熱気が充満していた。

鳴海は北海高校野球部の出身だった。北海道の雄として知られ、夏の甲子園の出場回数は全国最多。春の甲子園では準優勝の経験もあるが、夏の決勝進出は初だった。

この年、後輩たちの快進撃を見るにつれ、いてもたってもいられなくなり、土日の休みを利用して甲子園まで駆けつけた。

鳴海は現在、三谷商事建材事業部東京支店の支店長として忙しい日々を過ごしている。三谷商事といえば、建設・エネルギー・ITを中心にその他多角的に展開する商社であるが、特に生コン・セメントの販売量は全国シェア1位という業界のリーディングカンパニー。その東京支店の支店長という要職に32歳の若さで抜擢された逸材だ。仕入先、お客様、ライバル会社、協力会社等には、業界の歴史を体現しているような強面の先輩たちがゴロゴロいる。若い鳴海にしてみれば、自分の父親のような先輩たちと渡り合って、日々仕事をしなければならない。そんな面々のなかにあっても臆することなく、自らの仕事をまっとうできているのは北海高校野球部で鍛えてもらったおかげ。そう鳴海は思っていた。

17年前の夏、鳴海自身も甲子園の土を踏んでいる。

「北海の野球部に入れば、3年のうち1度くらいは甲子園に行けるだろう……」

その程度の軽い気持ちで入部した鳴海だったが、名門野球部とはいえ、甲子園への道のりは決して平坦ではなかった。鳴海の1つ上の世代には優秀な選手が多く、甲子園出場の可能性は十分にあった。もし野球が個人の総合点で勝負が決するスポーツなら、間違いなく先輩たちは甲子園行きを果たしただろう。しかし、野球はそういうスポーツではない。

鳴海が入学した当時、北海高校には大西監督という名将がいて、多くの選手が「大西監督の下で野球がしたい」と集まってきていた。

ところが、鳴海が2年生のとき、大西監督から現在の平川監督に指導者が替わった。今でこそ、北海高校を甲子園決勝まで導いた名将として知られる平川監督だが、鳴海が在籍した当時は「26歳の無名の監督が突如やって来た」という印象でしかなかったのだ。

前任の大西監督の存在が大き過ぎたのだろうか。1つ上の先輩たちのなかには「おれは大西監督の下で野球をするために、ここに来たんだ!」「新しい監督に野球を教わりたいわけじゃない……」という思いを最後まで払拭できない選手も少なからずいた。

結局、チームは内側から崩壊していき、能力に秀でた選手を揃えていた、その年の北海高校は甲子園行きを逃してしまった。鳴海にとっては苦い経験であると同時に、よい反面教師でもあった。

そして新チームになったとき、キャプテンに指名されたのが鳴海だった。

鳴海にしてみれば「なんでオレが……」という思いは拭いきれない。もともと鳴海はピッチャーだったが、同期には、中学時代に日本代表に選ばれたという、押しも押されぬエースがいた。そのエースの影で、鳴海はベンチ入りすらできない補欠だったのだ。「そんな自分がキャプテンなんて……」そう思うのも無理はなかった。まして、チームの状態はお世辞にも良好とは言えない。

しかし、鳴海は「やるしかない」とすぐに気持ちを切り替えた。どんなに厳しい状況でも、目の前の状況を受け止め、すっと前を向き、淡々とやるべきことをやる。

元来、鳴海はそんな男だった。

もちろん同期のなかにも「前の監督の下で野球がやりたかった……」といつまでも言う者もいたが、「そんなことを言っても監督が帰ってくるわけじゃない」「今の監督と一緒に、試行錯誤しながらやるしかないんだ!」。そう言って鳴海はチームを前に向かせた。

自身はピッチャーを諦めて内野手に転向し、必死で練習に励み、チームをまとめた。その結果としてつかんだ甲子園出場だった。

その野球部での経験が鳴海を人間として大きく成長させてくれたことは間違いない。

現状を受け入れて、淡々と前を向く大切さ。まとまらなければ、結果もついてこないという現実。

「北海高校の野球部には、本当に、大切なことをいくつも教えてもらいましたよ」と鳴海は振り返る。

⇒〈その2〉へ続く

 


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