商社の仕事人(70)その2

2018年12月11日

日本紙パルプ商事 秋吉省吾

 

熾烈な古紙原料獲得競争に

勝ち抜き

新たな再生紙ビジネスに挑む

 

機密文書という古紙を回収し再生紙へ

7年間の卸商営業の経験を経て、秋吉は主にトイレットペーパーやティッシュといった家庭紙を販売するJPホームサプライに出向している。国内及びベトナムに製造拠点を持ち、古紙を原料とした再生家庭紙を生産しているJPの連結子会社、コアレックスグループの工場向け古紙原料調達が現在の主な仕事だ。企業から発生する機密文書を適正に処理し、再び紙に戻すという循環型リサイクルの推進に注力しており、主なお客様は、大量に機密文書が発生する企業や、機密文書の保管を請け負う倉庫会社や運送会社などだ。

古紙100%で家庭紙を作るため、古紙の回収は重要な業務だ。また、古紙再生事業はJPグループ内でも大きなウエイトを占めており、注力すべき分野となっている。そんな中、秋吉は企業から発生する機密文書を古紙として回収する役割を担っている。近年では紙ベースの書類が減っているなか、ここでも新たな取引先を増やすことがミッションとなっているが、秋吉が目を付けたのは、ネガティブな状況ばかりではない。

「情報セキュリティーに非常に厳しい社会になっていることもあり、様々な法によって会社の機密文書を正しく処理することが求められる時代になっていることも確かです。そのため、1社当たりの機密書類のボリューム自体は減っていても、機密文書をきちんと処理したいという企業は増えているので、私の出番というわけです(笑)」

コアレックスグループでは、静岡県富士市でかねてより建設中だった再生家庭紙新工場が完成し、2015年7月から営業運転を開始している。新工場では、エネルギー効率の高い最新鋭設備を導入し、これまで稼働していた静岡と山梨の工場の2倍近い規模を誇っている。この新工場をフル稼働させることも、秋吉に課せられたミッションだ。つまり原料となる古紙もこれまでの2倍近く必要とされるため、営業力を発揮することが期待されているわけだ。

「機密文書処理量が減少している得意先や、現在では取引がなくなっている企業を中心に営業をかけています。また、卸商営業で培った人脈も活かし、機密文書の取り扱いに困っている企業を紹介してもらうこともあります。それこそ、機密文書の処理に関するキーマンを見つけるところから始めるケースもあります」

環境保全のため、古紙を原料とする再生紙を作ることには大きな意義がある。一方でペーパーレス時代のため原料となる古紙の発生量は減少していくという現実もある。そのため、最近では原料となる古紙の奪い合いが熾烈になっている。そこは、いかに先方の処理の手間を省き、流通コストを抑えた提案ができるか、秋吉たち営業マンの腕の見せ所となるのだ。

⇒〈その3〉へ続く

 


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