商社の仕事人(70)その3

2018年12月12日

日本紙パルプ商事 秋吉省吾

 

熾烈な古紙原料獲得競争に

勝ち抜き

新たな再生紙ビジネスに挑む

 

新しい再生紙工場の立ち上げに携わる

「ハーイ、トラックこっち!! 慎重に運転願います!」

富士山からの寒風が吹き下ろす中、富士市の台地に作業着を着た秋吉の姿があった。

コアレックスグループの富士工場では、設備投資によって最新機器が導入されていることもあり、他社の家庭紙工場では原料にならずに燃やされているような紙でも原料にできる。例えば、アルミが貼ってある菓子の空き箱のようなものでもOK。異物除去や漂白、洗浄などの処理によって、質の高い再生紙として生まれ変わらせることができる。

「生活の中から紙が減っていく現在の状況の中でも、他社より戦える力を持っているという点は当社の強みです。問題は、いかにして古紙原料を掘り起こし回収するスキームを構築していくか。その点は我々営業マンのスキルにかかっていますので、非常にやりがいを感じています」

秋吉は、コアレックスグループの新工場立ち上げ前の手伝いで、2月から4月の3か月間、静岡に駐在して様々な雑務も含めた本稼働への業務にも携わっていた。工場の機械は、試運転で再生紙を作りだしてから本稼働するまでに、半年近い調整期間が必要だ。試運転にも、当然原料となる古紙がいる。その手配や搬入作業等の仕事が、秋吉に託されたのだ。

「新工場は敷地面積が40,980㎡という巨大な施設ですが、当時はまだ完成していない段階ですから事務所棟もない状況で、プレハブ小屋で作業を行い、古紙搬入のトラックをさばき、ハードな毎日でした」

5月からはまた本社に戻ってきたため、完成した綺麗な様子をみることはかなわない。しかし、秋吉らの懸命の努力によって、現在は見事にフル稼働している。

「自分が本稼働に携わった工場だけに、我が子に対するような愛着もわき、〝フル稼働で活躍させてやるぞ〟という思いも生まれてくるんですね(笑)。だからこそ、原料となる古紙の回収には力が入ります」

そうこうしているうちに、秋吉の新工場での奮闘は、意外な展開を見せた。秋吉はベトナムに行くことになったのだ。静岡での工場試運転の際、同社の社長と宴席を囲む機会があり、「ベトナムの工場にも行ってみないか」と言ってもらったからだ。秋吉は、業務というよりも視察程度の考えでいたが、ベトナムでは厳しいビジネスの現実を突きつけられる。しかし、秋吉はそれを正面から受け止めた。

「〝ちょっと見てきたらどう?〟という感じの軽いノリだったのですが、実際には苦戦していたベトナム工場製品をベトナム国内で販路拡大するという命題が待っていました(笑)。ただ、海外における家庭紙の状況を肌で感じることができたのは、良い経験でしたね。ベトナム工場製のトイレットペーパーは現地で店頭に並ぶ機会も限られており、認知度も低く販売が伸び悩んでいる状況が続いています。しかし実際のところローカルの他社製品は質が悪く、うちの製品の方が圧倒的に高品質です。しかも、値段もローカルのものと遜色ない。これでなぜ売れないのか、日本にいたのでは分からないままでした」

⇒〈その4〉へ続く

 


関連するニュース

商社 2024年度版「好評発売中!!」

商社 2024年度版
インタビュー インターン

兼松

トラスコ中山

ユアサ商事

体験