商社の仕事人(5)その1

2019年12月19日

豊田通商 待鳥真由子

 

ラストフロンティアである

アフリカにビジネスの礎を築く

 

 

【略歴】
1980年福岡県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。2004年入社。

 

フランス語を学び、まさかのアフリカ担当に!?

「私たちの意見はまったく必要とされていないのかと思ったの」

フランスの大手商社、CFAO社の彼女のその言葉に、待鳥は愕然とした。パリのレストランでミーティング後のディナーをとりながら、彼女の浮かない顔の理由を思い切って尋ねてみたところだった。カルチャーの違いに注意を払わなければ、思いの食い違いがこれほどまでに大きくなるということを痛感させられた瞬間だったと待鳥は振り返る。

この出来事があった少し前の2013年4月、待鳥はCFAO社とのシナジーを生み出すべく新たに発足した、戦略提携事業部に配属されていた。CFAO社は、1887年の創業以来アフリカを中心にビジネスを展開してきた、フランス最大の商社だ。一方、豊田通商もアフリカでの活動は90年に及び、両社には親和性があり理念やビジョンにも共通点が多かった。2012年末、豊田通商はCFAO社の株式を約98%取得し、共にアフリカでのナンバーワン商社を目指すべく様々なミッションを開始したところだった。

「私は入社以来7年間、自動車ビジネスに従事し、シッパービジネス(メーカー純正の補給部品輸出)から海外も含めた出資事業体の統括などを幅広く担当してきました。担当する主な会社がフランスにあったこともあり、より事業に深くかかわりたいと考え、入社3年目には人事部付のフランス語研修生として1年間、加えてその後実務研修として1年7か月、フランスに行かせてもらったんです。英語でも、ある程度のコミュニケーションを取ることはできていましたが、やはりフランス語圏のビジネスパートナーとはフランス語でなければ、細かなニュアンスまでは伝わりにくいと感じたためです」

その頃すでに、豊田通商では最後の未開拓市場=ラストフロンティアとの呼び声も高いアフリカにおいて、ビジネスの可能性を探り始めていた。アフリカにはフランス語を公用語としている国が多く、待鳥は留学前、上司から〝フランス語を学ぶとアフリカの担当になるかもしれないよ〟と言われていたという。

「それでも、当時の私にとってアフリカはあまりにも遠く、ビジネスの場としてはイメージしにくい場所でした。まさか、私がアフリカという未知のフィールドを担当することになるとは、夢にも思っていませんでしたし、正直望んでもいなかったんです(笑)」

フランスから帰国後ほどなくして、待鳥はフランス語のスキルを活かして欲しいと乞われ、CFAO社専属の事業部へと配属される。豊田通商とCFAO社、両社における事業シナジーの創出のためには、まず合併後の統合業務をいかにスムーズに、かつ緊密に進めるかが重要なポイントとなる。両社の思いが融合していなければ、意思決定もままならないためだ。そこで待鳥は、両社の経営基盤を整えるミッションを請け負うことになった。

「日本の会社同士でも、カルチャーが違えば統合はとても難しいもの。まして相手はフランスの会社ですから、難しいものがありました。融合を進めていくうえで、私たちは3つの点で〝アフリカで№1の企業グループになる〟という目標を掲げました。ひとつは、アフリカにおける事業開拓。そして、アフリカの現地人材の育成を行うこと。最後のひとつが、寄付や援助ではない、サスティナブルなアフリカ社会への貢献、つまり戦略的なCSR活動を行うことでした。私はこの中で、CSRを担当しており、アフリカ社会における様々な課題を解決に寄与するCSR活動を両社共同で出来ないか、CFAO社の担当者と企画立案することとなったのですが、その時、カルチャーの違いを痛感する出来事が起きたんです」

⇒〈その2〉へ続く

 


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