商社の仕事人(5)その3

2019年12月19日

豊田通商 待鳥真由子

 

ラストフロンティアである

アフリカにビジネスの礎を築く

 

 

ビジネスに直結するCSR活動事業を

これまで、英語圏である東部アフリカの国々に対してビジネスを展開してきた豊田通商。現在は、フランス語圏であることから日本企業にとって参入障壁の高い中西部の国々に、CFAO社と共に進出を図っている。待鳥は、その突破口を開くべく、コートジボワールをパイロット国としてローレンスとともにCSR活動を構築している。

「昨今、CSR活動が目指すべき形が変化しており、事業を通じて社会的課題を解決する活動を行うことこそ社会的意義があると考えられています。その点で言えば、豊田通商とCFAO社の共通の強みが自動車部門であることから、自動車に関連するCSRを展開すべきだと考えました。そこで調査していくと、アフリカにおける死亡原因のひとつに、自動車事故が大きなウエイトを占めていることが分かりました。人々の暮らしになくてはならない物である一方、人命に関わるのでは、社会的損失につながる。そこで、自動車を安全に使ってもらうための啓蒙活動を展開することとなりました。安全な運転の仕方から、メンテナンスの重要性まで、日本では当たり前のことがアフリカでは知られていなかったのです。トヨタ車はアフリカで法人に対しての販売も多いのですが、ただ良い車を提供するのではなく、従業員の命も守るサービスが提供できれば、CSRの意義も高まります」

CSRは〝ドネーション(寄付・寄贈)〟だという考え方も多く、企業によっては「予算を付ければそれでよい」という傾向も少なくはない。しかし待鳥は、このような考え方を嫌った。社会に貢献しないCSRは、無意味であり予算の無駄でもある。商社にとってのラストフロンティアであるアフリカの、持続可能な発展への貢献を考えれば、CSRはその土台となるものだ。

「ローレンスと私はすぐに共鳴できたのですが、CFAO社の中には、CSRに対してドネーションの意識が若干ありました。そこで、マインドを変えてもらうために豊田通商の役員を担ぎ出し、ドネーションではないコンセプトのCSRを展開しようと呼び掛けてもらいました。代表担当者は私でしたが、マインド面を変えてもらうには、上役を出した方が効果がありますからね(笑)」

待鳥の策略が功を奏し、2社によるCSR活動は着実に歩みを進めている。

「このような土台を整えておけば、〝豊田通商とCFAOに頼めばアフリカの為に何かしてくれる〟という信用がアフリカで築けると思っています。日本政府は、1993年から日本とアフリカ首脳が一同に会するアフリカ開発をテーマとした国際会議『TICAD』を5年ごとに開催してきました。昨年それが行われ、次の開催は5年後ではなく3年後の2016年とも言われています。その頃までには、アフリカ市場における協業にひとつの結果を出して、実績でアフリカ各国に豊田通商とCFAO社をアピールしたいですね。もちろん、これは日本の都合ですが、CFAO社にも同じ意識を持ってビジネスを考えてもらえるよう、相手のカルチャーをリスペクトしつつ、新しいシナジーを生みだせて行けたら嬉しいですね」

⇒〈その4〉へ続く

 


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