豊田通商 待鳥真由子
ラストフロンティアである
アフリカにビジネスの礎を築く
キャリアの中のコアを築く
中西部アフリカ市場開拓の土台作りに全力を注いでいる待鳥だが、就職活動では商社を目指していたのではないという。金融関係の仕事に就いていた父の影響で、彼女も金融業界を目指し、そのため大学も経済学部に進んでいた。
「しかし、いざ就職活動の際に突き詰めて考えてみると、私がやりたいのはエンドユーザーの顔が見える仕事だった。それは金融ではないと分かりましたが、では商社はというと、BtoBのイメージが強く、これも違う気がした。けれど、豊田通商はまだ未完成の企業でもあり、現場に強みがある商社でもあった。若手にも裁量を与える社風にも惹かれました。今は、10年前からは想像もできないような仕事をしていますね(笑)」
仕事の内容より、社風が合う企業を選ぶことで、たとえ最初の思いとは違っていてもハッピーなキャリアが築けると語る待鳥。とはいえ、いまだ男社会である商社というフィールドで、ビジネスに対する不安はないのだろうか。
「商社は、これまでになかった新しい価値や考え方などを仕組みに落とし込み、ビジネスに仕立てることが仕事です。そのため、生涯好奇心をもって勉強したいというマインドがないと難しいかもしれない。言い換えれば、日々勉強していくことを、面白いと感じることができるならば、男性でも女性でも関係ない気がしますね。もちろん、肉体的なタフさは必要です。私自身、国内で1週間出張に出て、帰ってきた翌週からアフリカ出張、というスケジュールも少なくありません。でも、誰かに任せるのではなく自分で切り開くことを楽しいと感じることができれば、体力は後からついてくると思います」
ただし、女性だからこそ必要なものもあると言う。それは、キャリアの中のコアを築くことだ。
「男性と決定的に違うのが、出産や子育てなどのライフイベントで、一時期仕事を去らなければならないときが必ずあること。その後で、〝待鳥に戻ってきてもらわなければ〟と思ってもらえるような、キャリアのコアを作っておく必要があると思います。この部分は、ずっと働き続けることができる男性の商社マンよりシビアに考える必要があるでしょうね。私自身も、アフリカビジネスのキャリアをもっと重厚にして、コアを築いていきたいと思っています」
ラストフロンティアへの可能性というポジティブな側面のみではなく、アフリカには安全面や政情不安など懸念材料が多いのも現実だ。しかし、将来のポテンシャルやCFAO社とのアライアンスの意義や目的をしっかりと捉え、ステークホルダーとの一層の信頼関係構築しながら、待鳥は柔軟な感性と強い意志を武器に商社というフィールドで活躍を続けていくことだろう。
学生へのメッセージ
「男性に勝る特別な能力・体力・気力を持った女性の先輩社員が切り拓いたおかげで環境は変わっています。次のステージでは、女性でももうひとつ踏み込んで頑張れば、誰でも管理職を目指せる時代になった、ということを私達の世代が示していかなければならないと思っています。確かに商社はまだ男社会ですが、私自身はさほど難しさや違和感を感じてはいません。商社でビジネスを創る者に求められるのは、新しいものへの好奇心や、〝待ち〟ではなく〝攻め〟の姿勢、そしてチームワークを生みだせる協調性などで、これは男女の差はないと思っています。新たな価値を生み出すことに喜びや面白さを感じられるなら、商社は女性でもどんどん活躍できるフィールドだと断言できますね」
※なお、こちらの内容はインタビュー当時のものであり、現在は部署異動となっております。
待鳥真由子(まちどり・まゆこ)
【略歴】
1980年福岡県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。2004年入社。ダイバーシティの観点として女性の活躍推進をキーワードに掲げる豊田通商では、管理職を目指す女性の活躍に注目している。待鳥はその期待の星とも言える存在だ。
『商社』2016年度版より転載。記事内容は2013年取材当時。
撮影:葛西龍