商社の仕事人(18)その1

2017年05月8日

帝人フロンティア 髙橋佳佑

 

自動車の内装生地の開発に

魂を込める

 

 

【略歴】
1984年愛知県生まれ。南山大学経済学部卒。2008年入社。

 

若手のエースとして国内外を飛び回る

静寂に包まれた深夜のオフィス。入社3年目の髙橋佳佑はひとり台帳をめくっていた。初めて自分が主担当となって成功させた商談。その成果を自分の目で確認するためだ。心を踊らせながら担当した商品の項目まで来た時、思わず自分の目を疑った。なぜだ、こんなはずでは……必死に他の台帳をめくり、その理由を探し、突き止めた瞬間、全身の血液が凍った。髙橋は深夜のオフィスでひとり頭を抱えた─―。

髙橋が所属する帝人フロンティア株式会社は衣料繊維部門と産業資材部門を両軸に繊維の専門商社として国内ナンバーワンの地位を誇っている。2008年に入社した髙橋は、産業資材部門の車輌資材部内装資材課に配属。この課の主な業務は自動車の内装に使用されるファブリック(生地)のOEM生産および販売。髙橋の仕事は自動車メーカーの要求を満たす生地を、ニッターと呼ばれる編工場や染色工場と協力して作り上げること。仕入れた原糸が生地になるまでの長い工程を管理すべく、全国各地にある工場に頻繁に足を運ぶ傍ら、客先のニーズを受け海外へも出かけている。そのため大阪の本社にいるのはわずか5日という月も珍しくない。でもそれは必要なことだと髙橋はいう。

「営業にとって一番大事なのは、とにかく可能な限り現場に行って人と会うことだと思っています。別に商売の話が何もなくてもいいんです。〝最近どうですか〟と世間話だけに終わってもいいし、〝何しに来た?〟と言われてもいいんです。ビジネスの前に、人と人との信頼関係が大切。すぐには利益にならなくても長い目で見ると必ず大きな利益となって返ってくると信じていますから。幸いみんな何も特別な用事がなくても〝遠いところからよう来たな〟と言ってくれますけどね(笑)」

海外へ行く目的の1つはコストダウン。台湾、韓国、タイ、インドネシアなどはそもそもの原糸の値段が日本とは比べ物にならないほど安い。さらに近年は品質的にも向上している。よって、現在はほとんどの糸が海外製になっている。最近ではさらにもう一歩進めて、現地国で生地の生産・販売まで行うようになった。現地で高品質な生地を生産することができる工場を探し出し、契約し、生産技術やノウハウを教え込むのだ。現地で糸を調達し、生地の生産までをトータルでコンバートする事ができれば、物流費や関税の面でさらなるコストダウンが可能となる。すでにインドネシアやタイ・中国では現地の糸を使って現地の工場で実際に生地を生産している。その礎を髙橋が築いているのだ。

⇒〈その2〉へ続く

 


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