商社の仕事人(19)その3

2017年05月17日

第一実業 柳澤保則

 

日本のエネルギー問題の

解決に尽力

 

 

プレッシャーと隣合わせの3か月

調査掘削のプロジェクト期間はあらかじめ決められており、絶対に伸ばせない。目標とする深さまで掘削できなくても強制的に終了となり志半ばで現場を離れるしかない。決められた時間の中で、可能な限りの大きな成果を上げるために最大のサポートをすることが柳澤たちに与えられた最大のミッションとなる。

「終了間際になると、開発会社も当初の予定を変更し、違うやり方で最後の最後ギリギリまで調査しようとします。そうなると使用する機材も変わるので、それに対応するのも大変でした。最後の2週間は本当にドタバタでしたね」

また、プロジェクト終了後、使用した巨大な機械を本国に返却することも柳澤に課せられた大きな仕事だ。大きいものでは20メートルにもなるため、船でしか運搬できない。それほど巨大な機械になると運搬する船も巨大になる。そんな巨大な船が行き交う港湾を出るためには、通関や港湾管理会社との調整やタグボートの積荷手配などが必要になる。最後まで気の抜けない作業が続く。

「確かにモノの調達が我々のメインの仕事ではあるのですが、そういったロジスティックやこまごまとした代理業務もお客様から期待されている大事な仕事。それらも含めてきっちり遂行できるのが本当の商社パーソンだと思っています」

機械到着の連絡を受けて、やっと作業が完了した。柳澤たちの活躍もあり、掘削調査プロジェクトの達成度はほぼ100%だった。

「3か月間のプロジェクトが終わったときはほっとしましたよ。これでやっと安心して眠れるって(笑)。納期管理や部品調達など私がいたからうまくいったと、お客様からは感謝の言葉をいただきました。それが何よりうれしかったですね」

しかし手放しに喜ぶことはできなかった。結果的に、今回の調査では大きな埋蔵量があるという確証を得られなかったのだ。

「我々は石油が見つかった後のことも見据えて仕事に取り組んでいたので確かに残念でしたが、目指すものは人の手の遠く及ばない海の底ですから。こればかりはいくら陸上で調査しても、実際に掘ってみるまでわかりません。でもまた同じようなプロジェクトがあれば、私は迷わずチャレンジするでしょうね」

⇒〈その4〉へ続く

 


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