商社の仕事人(30)その4

2017年08月3日

第一実業 小番俊幸

 

異国の地で孤独に打ち勝ち

大きく成長

 

 

タイでの奮闘

タイの状況は想像以上に凄まじかった。洪水による深刻な被害がそこかしこに見えている。ようやく街中の水が少しずつ引き始めると、数多くの日系企業から使用不能となった設備や工場再建のための問い合わせが殺到した。小番はいち早く復興の手助けができるよう各企業から細かな要求を聞き逃さず、あらゆる取引先を飛び回った。ひと息つく暇もなかった。

「洪水被害のことを考えればとにかくできるだけ早く工場を復旧させることが急務でした。その中で自分にできること、第一実業としてできることは何か、そんな思いが頭の中を駆け巡っていました」

被害を受けた企業と保険会社との間に入り、支払交渉などの資金面に関する仕事も行った。流れてきた仕事をただこなすだけではなく、自ら判断して行動した仕事に対し、お客様から「ありがとう」と感謝された時、小番は非常に大きなやりがいを感じた。

赴任から2年半後、小番はゼネラルマネージャーに昇格。SMT実装機販売の指揮を執り、順調に業績を上げていた2015年4月、日本に帰国した。ロンドン支店に飛び立ってからちょうど10年目のことだった。

怒涛のような10年間において、イギリス、ハンガリー、ドイツ、タイという、さまざまな地で多くの人と出会ったことを思い返すとともに、ひと回りもふた回りも成長した自分を感じた。

現在は、韓国、台湾、中国などの地域へ向けたSMT実装機のさらなる拡販のため、海外拠点との調整役を担っている。海外経験を生かし、現地駐在員とともに積極的な営業を仕掛けている。

「これまで、海外駐在員として主体的に仕事を進めてきたことが多いので、自分の努力だけで実績を作ってきたと思いがちですが、日本に帰国してからは、それは思い違い、思い上がりだということに気づきます。日本で私たちを支えてくれていた仲間がいてくれたからこそ、乗り越えられたのです。今度は私が各地の海外駐在員を支える番だと思っています」

厳しい状況にあっても孤独に耐え、決して諦めず、そのときにできる最大限のことを行い続けてきた小番の言葉には「感謝」の心が見える。その気持ちを忘れないまま、次のステージへの希望を抱く。

「私には、欧州や米州で第一実業の核となるビジネスを生み出したいという目標があります。今後も海外駐在員に選ばれる機会はあると思うので、その際には積極的にチャレンジしたいですね。そして、元々商社に入りたいと思った動機でもある、世界の架け橋となるような仕事がしたいと思っています」

彼が再び海外へ飛び出し、希望の新天地で生き生きと働く日が来るのも、そう遠い未来ではないのかもしれない。

 

学生へのメッセージ

「第一実業の最も好きなところは、独立性が強くしがらみもないので自由な発想で働けることですね。海外駐在時もこうしてみたいと思ったことは行わせてもらえました。商社パーソンとして良かったと思うのは、やはり海外で働けたことです。さまざまな国のたくさんの人と交流を持てることが大きな魅力であり、醍醐味だと思います。第一実業に向いているのは、希望を多く持った人でチャレンジ精神や好奇心が旺盛なタイプです。例え突然何かを命じられても、何だかおもしろそうだと興味を持てる人はぜひ第一実業の門を叩いてください。世界の舞台で共に活躍できる日を楽しみにしています」

 

小番 俊幸(こつがい・としゆき)

【略歴】
1975年東京都生まれ。上智大学外国語学部ドイツ語学科卒。1999年の入社後、6年間エレクトロニクス業界にて営業を担当。入社7年目に新設された海外研修制度に応募し、第1期生としてイギリス・ロンドンへ渡る。当時、欧州の新拠点として位置づけられたハンガリー・ブダペストにおける事務所の立ち上げのサポートや日系企業の進出サポートに従事。半年間の研修後、2005年10月、ブダペスト事務所長に任命される。2008年10月に第一実業(欧州)Electronics Group へ異動となり、ドイツ・フランクフルトへ赴任。2011年10月に第一実業(タイランド)Electronics Group へ異動となり、タイ・バンコクへ赴任。2015年4月に帰国。

 

『商社』2017年度版より転載。記事内容は2015年取材当時のもの。
写真:葛西龍

 


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