商社の仕事人(40)その3

2017年12月13日

蝶理 松下友和

 

バングラデシュでのモノ作りに

熱い思いを燃やす

 

 

さまざまなサポートに恵まれてモノ作りの体制整備が実現

 松下にとっては、バングラデシュの縫製工場の底上げも大きな課題の1つだった。日本の顧客が要求する品質レベルはかなり高いので、それをクリアするためには、工場の従業員の技術レベルを上げなければならない。それをサポートしてくれたのが本社の縫製のプロだ。松下よりかなり先輩の彼は、松下の要請に快く応じて、1か月間も工場に張り付き、従業員に付きっ切りで指導してくれたのである。

「彼もたぶん、あり得ない世界に来たと思ったに違いありません。その感じ方は半端じゃなかっただろうと思いますが、懇切丁寧に手取り足取り現地の工員を指導してくれました。お客様が求めている品質レベルをクリアするまでにはまだ至っていませんが、かなりいい線まで上がって来ていることは確かです。彼はそこで満足することなく、今でも指導を行ってくれています。本当に有難いことだと思っています」

会社の先輩が後輩をサポートするのは当たり前と言えば当たり前だが、顧客がサポートしてくれるというのはそうそうあることではないだろう。顧客にしてみれば、要求通りのものを仕上げてもらえばそれでいいわけであって、松下がどんな苦労をしようが、赤字を出そうが、そんなことは関係ないというのがごく普通の在り方だ。ところが、今回はそうではなかった。

「お客様自身もチャイナ・プラスワンのプラスワンをどこに求めたらいいのか模索している時期でした。私たちがバングラデシュでのビジネスの立ち上げにチャレンジするということが、非常に新鮮に映ったのだろうと思います。だから、このプロジェクトには、お客様も積極的にかかわってくれました。言ってみれば、お客様が同じ船に乗ってくれたのです。どういう新大陸を発見できるかは分からないけれど、一緒の船に乗って、それを発見するために漕ぎ出しましょうということだったのです。その意味では、お客様にも非常にいいサポートをしていただきました。言い換えれば、それだけ彼らもバングラデシュに魅力を感じてくれたのだと思います。私たちはお客様にも恵まれました」

「最も貧しい国で、最高に品質にうるさい日本市場に耐え得るモノ作り」というきわめて難しいプロジェクトも、やっと体制を整えることができた。松下の情熱と行動が実を結びつつある。それでも松下はサポートしてくれた人たちに対する感謝を忘れない。そして現在、バングラデシュで縫製された製品を武器に、国内で新規顧客の開拓に励んでいる。

⇒〈その4〉へ続く

 


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