商社の仕事人(45)その3

2018年02月14日

岩谷産業 齋藤良輔

 

新しいエネルギー市場を視野に

ポリシーを持って全力投球

 

 

新規開拓に明け暮れた新入社員時代、500件のリストを真っ黒に塗りつぶす

旅費を捻出するため、40種類以上のバイトをこなしたという大学生活。やがて始まった就職活動では、当初から志望を商社に絞り込んでいた。

「総合商社、専門商社ともにあちこち受けました。就活を通して、やはり中規模クラスの商社のほうが自分に向いていると確信するようになりましたね。組織的なスケールよりも、社員それぞれの会社を大きくしていこうというバイタリティ、フットワークといった部分に魅力を感じたんです。またもう1つ、新しいビジネスを作り育てていくというベンチャー的な部分も求めていました。そうした意味でも液化水素という新しいエネルギーを開拓している専門商社である岩谷産業が、最終目標として固まったんです」

だがすぐ思い通りの仕事に就けたわけではない。2004年4月の入社後、1か月の研修を経て配属されたのは業務統括部。この年から始まった新しい人事制度に基づいて、伝票の計上、会議の資料作りといった業務処理の仕事を任された。

「もちろん人事制度の狙い通り、仕事の流れを理解する勉強になりました。でも自分としては営業への意欲が最高潮に上向いていたので、何でやらせてくれないんだという気持ちが強かったです。始まって1週間後の人事面談から、営業をやらせてほしいと言っていました(笑)」

チャンスが巡ってきたのは翌年の2月。近畿支社大阪支店の産業ガス・機械課に配属され、最初の1か月はOJTとして先輩と一緒に顧客を回った。

「その後に既存の顧客を任される人もいるのですが、私は新規開拓だけが担当でした。当時の上司はとりわけ仕事に厳しく、新人に既存の顧客を任せるのは会社にとってリスクという考えを持った方だったんです」

齋藤が扱ったのは、関西電力とのタイアップで始まった法人向けの蓄電池再生技術。工場やオフィスなどの停電に備える蓄電池を、診断・再生でき更に低コストで提供するビジネスだ。

「最初の成約は1か月目。ただ商品そのものの魅力が非常に突出しているので、自分でやったという達成感はあまりなかったです。むしろ私は、既存の顧客を早く任せてほしいと思っていました。会議でも先輩たちの上げている数字や予算を見ると、自分だけ取り残されているような気持ちでしたから」

そこで齋藤が自分に課した目標は、担当エリア内の訪問先を全て回り切って売り尽すこと。資本金、従業員数などから割り出した潜在顧客数は、約500社に上った。

「新人ですから門前払いは日常茶飯事です。ただ商品は本当に優れているので、提案できないまま諦めることはしたくなかった。だから話を聞いてもらえるまで粘り強く通い続けたこともよくありました」

先輩たちのアドバイスやサポートも得ながら、約500社全てを回り終えたのは1年半後。齋藤は支店長、支社長との定例面談で、真っ黒になったリストをテーブルに置いた。

「これで既存の顧客を任せてくれないなら、異動させてほしいとまで言ってしまいました(笑)。けれどもその場ですごくほめられましたよ。後日談ですが、それまでも先輩へのいい突き上げになっていると評価してくれていたそうです。それもあって、齋藤には厳しくやらせようという方針だったようですね」

⇒〈その4〉へ続く

 


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