商社の仕事人(51)その4

2018年04月12日

JFE商事 小黒善之

 

企業をつなげて

自動車大国・インドの成長を

支える

 

企業をつなげる――これが商社の仕事の醍醐味

もちろん、仕事はスムーズにいくことばかりではない。時には先方が指定した納期に間に合わないという事態も起こる。

「何だって!? 納期が遅れる? ラインを止めるわけにいかないのはわかっているだろう? どうしてくれるんだ!」

自動車メーカーの担当者から矢のような催促がくる。自動車の生産ラインは数分間止めるだけで数百万円、数千万円という損害が出るのだ。それだけは避けなければいけない。しかし、鋼材はすぐにはできあがらない。少なくとも2週間はかかる。しかも、インドへの在来船は月に1回しかない上に、日本からインドの港まで1か月はかかる。小黒は悩んだ。

「どこで日数を短縮すればいいんだ? 仕方ない、費用はかさむがコンテナ船を使おう。あれなら週に1回あるし、3週間で港まで届けられるはずだ」

幸い何とかラインを止めずに済みそうだ。しかし、これで終わりではない。次は費用の交渉だ。かさんだ費用を双方にどのような割合で負担してもらえばいいのか、小黒の交渉力が試される時だ。双方とも世界に名を轟かせている巨大企業である。自分たちの主張はなかなか譲らない。内容によってはJFE商事が費用負担を強いられることもある。だからといって落胆している暇はない。信頼を得るためには「損して得取れ」である。商社はものを作って売るという商売をしているわけではない。商社が売るのは知恵である。商社は頭脳集団といってもいいだろう。複数の巨大企業の異なる主張をコントロールし、交わりそうもない平行線をやさしく、時には力まかせにつなぎ合わせる。巨大企業同士が手を結べば、そこからさらに巨大なものが生まれるだろう。つなげることで世界を動かすものを作る、これこそが商社マンの醍醐味なのである。

⇒〈その5〉へ続く

 


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