商社の仕事人(2)その5

2019年10月1日

阪和興業 ウエンセスラオ・マンザノ

 

海外の非金属リサイクルビジネス

狙うメキシコ人

 

 

部署が多国籍化することで、会社のグローバル展開はさらに進む

2014年4月からはヨーロッパも担当地域に加わった。ヨーロッパ産のリサイクル原料は品質の問題はほとんどないが、国の数が多いので競争相手も多い。ビジネスモデルが今までとは違ってくるが、まだ明確な形は見えていない。出張に出ると約二週間で十数か国を回り、ほぼ毎日違う国へと移動する中で、新規の取引先をいかに開拓するか方策を練る日々が続く。

最近になって、海外で仕入れた原材料を中国や米国など国外に販売する三国間取引も増えている。

「国内需要が停滞すると、どうやってほかの市場にアプローチするかがテーマになります。高度成長時代から日本はずっと海外から原材料を輸入をしてきましたが、スクラップ材などを逆に輸出するケースも出てきました。中国やインドなどの成長市場は、仕入れ先であるとともに販売先でもあります。品質は厳しくないかもしれませんが、その分価格については極めてシビアな交渉になります」

取引先だけでなく、東京のオフィスもグローバル化は進む。今のフロアには中国人や韓国人など多国籍の社員がたくさんいる。しかもラオは日本人の新入社員の指導員を任されている。

「今までは自分が一番若手でしたが、教える立場になると間違ったことは言えないので、改めて勉強しないといけません。社内がグローバルだと、日本人・外国人の別なく、お互いに教えたり教えられたりでおもしろい経験を互いにできるようになりますね」

世界に通じる人材になるにはいろんな経験を積むことが必要だが、その為の協力は進んでやっていきたい。後輩には伝えたいことは山のようにあると言う。 月のうち二週間は日本、二週間は海外というのがラオの日常だ。同じホテルに二泊出来れば洗濯がやれて助かるが、それも中々ままならないという。

「一年の最初に計画を立てて、気づくともう半年が過ぎている。めまぐるしい時だけが過ぎ、とても今年中には終わらないかもと不安になることもしばしば。それぐらい入社してからの四年間は、人生の中で一番早いスピードで動いている。それでもお客さんと毎日仲良く仕事することがで楽しくて時が経つのを忘れてしまいます。取引はこれからさらに地球規模で増えていき、この部署も阪和興業もグローバルに展開していきます。その過程に身を置いて働くことができて幸せです」

 

学生へのメッセージ

「仕事で一番覚えているのは、娘が生まれる直前に病院で受注した案件です。錫の地金の販売でずっと追いかけていたお客さんからなかなかいい返事をもらえなかったのが、まさにその日に買いますという電話がかかってきたので、今でも忘れることができません。私は就職先を商社に絞りましたが、メーカーの説明会に行くと、こんなものも作っているのかとすごく勉強になりました。だから最初は業界を絞らずに幅広く見るのがいいと思いますよ。それから社会人になってからも学ぶことはたくさんあります。誰かが教えてくれることは、それだけの理由があるから教えているということを考えて、まずは素直に受け入れてください。なぜそうなのかを聞くことも必要ですが、心を開くことも大切です」

 

阪和興業 ウエンセスラオ・マンザノ

【略歴】
1984年メキシコ・オアハカ生まれ。2011年阪和興業に入社。家族は日本人の妻と一人娘。祖父が家に和室を作るほど日本ファンで、自然と日本に興味を持つようになったという。

 

『商社』2016年度版より転載。記事内容は2014年取材当時のもの。
撮影:葛西龍

 


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