商社の仕事人(2)その3

2019年10月1日

阪和興業 ウエンセスラオ・マンザノ

 

海外の非金属リサイクルビジネス

狙うメキシコ人

 

 

会社ではなく、ラオさんだから取引する

ラオは海外のリサイクル原料だけでなく、国内の非鉄金属原料問屋や加工処理の会社も担当する。ほとんどの人は、最初に名刺交換するときに英語で話しかけてくる。ラオの母国語はスペイン語だが、そんなことはお構いなし。日本人の外国人観を見る思いです。

「その次には、日本語は分かりますか? と聞かれます。あ、分かりますねとなって、最初の壁がなくなるような感じです」

国内取引で外国人の営業担当がやって来るのだから、相手が驚いても不思議ではないとラオは思っている。むしろ自分がどれだけ日本人の心が分かって、気持ちを通じ合えるようになれるのかと心配だった。

「だから、それぞれのお客さんのことをよく知りたいと思って、話したことは一つ一つ覚えておくように心がけています。お子さんは小学生か中学生か高校生か、部活は何をしているかなど、家族やプライベートなことも含めてすべてです。より深く知るほど仲良くなれます」

商売の話をするにしても、人対人で話をしているという基本は変わらない。大きな契約を取れたときよりも、いい関係ができて人として認められたときに手応えを感じるとラオは言う。

「これまでずっとしてきた取引をもう止めようと思っていたけれど、ラオさんと会ったから、ラオさんと取引しますよ、あなたのことが好きだから、〝会社じゃなくてあなたと取引するんです〟と言っていただいたときは、この仕事はすごいやりがいがあると思いました」

こう言ってくれた相手は、国内のリサイクル処理会社の常務だった。ラオが入社して一年二か月後のことだった。その人は学生時代にメキシコに滞在したことがあったというから、ここでも母国が取り持つ縁があったのかもしれない。

⇒〈その4〉へ続く

 


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