阪和興業 ウエンセスラオ・マンザノ
海外の非金属リサイクルビジネス
を狙うメキシコ人
男に魅入られた男、ラオ
メキシコでの最初の契約から二年後に、中南米の非鉄金属リサイクルビジネスはラオの手を離れることになった。ロスアンゼルスに阪和興業の米国現地法人が事務所を構えて、そこに非鉄金属部から駐在員が置かれることになったからだ。
その代わりに2013年4月から、インドと中東の非鉄金属リサイクルビジネスを担当することになった。メキシコや南米の方がなじみやすかったかというと、そうでもないという。
「インドも中東も、ああ、やっぱりこんな感じかなと。というのは通った高校が香港にあるインターナショナルスクールで、80か国から生徒が集まっていたからです。だからいつもオープンな気持ちでいるし、インドに行けばインド人が食べているカレーを食べてすぐに馴染みます。最近は、ずっと外国に住んでいる自分が、本当にメキシコ人かどうか悩んでいるところです(笑)」
インドはヒマラヤから南端まで、中東もほぼ全域を回って仕入れ先を探している。一人一人の相手を大事にして、その人に関わるすべてを覚えようとする姿勢は日本にいるときと同じだ。
「中東では〝彼女〟ができたんですよ。サウジアラビアの仕入れ先の男性なんですが、電話やフェイスブックなどで頻繁にやりとりしているうちに、公私の別なく付き合うようになってしまったんです」
そうこうしているうちに、やがて向こうが冗談で「私、ラオさんの彼女です」と言うようになったのだという。
「相場変動が激しい非鉄金属の動向を、『飛行機に乗る前も、ホテルに着いたときも、寝る前も連絡してください』と頼まれて。どうしてそこまで自分を頼ってくれたのかは分からない。自分でも不思議です」
それでもその男性が日本にやって来たときには、文化の違いを痛感させられた。宿泊したホテルに、メッカに向かって祈りを捧げることができる施設がないというので一騒動が起きたのだ。ほかを探し回ってなんとか見つけることができたが、意外なところで気を遣うことが多いとラオは感じている。
「たとえばフォークリフトと言うと社長さんは分かっても、中東やインドの現場の人は見たことがない。そこまで考えて、すべて誤解や間違いが起きないように分かりやすく伝えるように気をつけています。それから請求してもずっと入金してこない。約束したことをやってくれない。品質面も日本の水準からするとよくないものが多く、輸入してみたら加工処理業者から、クレームを受けることも日々あります。それらを相手に伝えないといけないので、厳しいことも言わなければなりません。ただ、普段から良い関係を築いておくと、厳しいことも普通に言い合えますね。」
⇒〈その5〉へ続く