商社の仕事人(59)その1

2018年06月25日

蝶理 高山昌樹

 

日本製品にこだわり、

ブラジルでのビジネス拡大に挑む

 

 

【略歴】
高山昌樹(たかやま・まさき)
1982年、山梨県生まれ。獨協大学外国語学部(現:国際教養学部)卒。2006年入社。

 

勝負の時に臨む

ビジネスには旬がある。流れを見極め、ベストなタイミングを見計らって一気に勝負を賭けなければならない。そのときはわき目も振らず全力投球である。

入社6年目の高山昌樹は、今まさに、その「勝負の時」を迎えていた。

3年前に衣料資材部衣料資材課から機械・機能材料部第1課に異動した高山は当初、チリ、コスタリカ、ドミニカなどの中南米諸国の代理店へ二輪車・小型船に使用されるエンジンを主とした機械類を輸出する業務を担当していた。実績を積んだ高山は、その後経済成長著しい南米のブラジルにおけるビジネスの拡大に、急遽取り組むことになったのである。

「中南米諸国は、リーマンショックからの立ち直りがわりと早かったのですが、その中でも最も早く立ち直ったのがブラジルでした。そこに当社も目を付けて、もっともっとブラジルに機械を売り込んでいこうということになったんです。駐在員はいませんので、当然誰かが担当者に指名されることになるはずなんですが、それがすっと僕に決まってしまったんです。言わば、『お前に任せたよ』という上司の思惑を、僕が暗黙のうちに了解したという形です」

高山は最初のうちはエンジンや建設機械を扱っていたが、1年後には、新しい商材を扱うことになった。既存の商材ばかりを扱っていたのでは、その時点では確かにビジネスが拡大していたとしても、やがては限界が訪れることは明白だったからだ。そこで高山が新たに扱うことになったのが、エネルギー開発などに必要とされる日本メーカーの設備や機械だった。経済成長を続けているブラジルには、それらに対する旺盛な需要があったからだ。しかし、需要がある所には供給する企業が集まり、いきおい激しい競争が展開されることになるのもまた理の当然である。ブラジルのある大手企業にそれらの設備・機器を売り込もうとしていた高山も、案の定、外国企業から厳しい洗礼を受けることになる。

「彼らは手ごわいですよ。ブラジルでビジネスを展開している欧米のメーカーが、僕らの進出を阻もうとして、自分たちに都合のいいようにスペックを変えたりするんです。また、彼らは以前から現地に入っているので、お客様の要望に素早く対応できるという強みも持っています。たとえば1週間である製品の段取りを用意してくれというリクエストに対して、彼らは2日もあれば十分に対応できます。ところが、現地に入っていない日本のメーカーには距離的な問題もありますから、そんな短期間では対応できません。いくら日本のメーカーが高度な技術や伝統を持ち、信頼を得ていたとしても、彼らと同じ土俵に上ることがまず非常に難しいんです。何処を向いてもハンディばかりですが、これをクリアしなければ、ビジネスなど夢物語です」

そんなハンディもなんのその、高山は早速動き始めた。現地ブラジルに拠点のない蝶理にとって、現地での情報収集、販売の仕組み作りが必要だった。まずは、ブラジルに精通した元同業者の方をコンサルタントとして起用し、販売体制を整えるためパートナー探しを始めた。約半年間、現地エンジニアリング企業との協議の結果、パートナー契約を締結することができた。高山はまだ現地に常駐していないが、コンサルタントから得る貴重な情報の活用、また、そのエンジニアリング会社がどう機能を発揮し、高山たちのために動いてくれるかがポイントになる。だが、高山には勝算があるようだ。

「見えない所でコツコツと努力を続けて行って、いきなり花火を打ち上げてやろうかと思ったりもしているところです。その布石は打っています。いつまでも勝負の決着を延ばすわけにはいかないので、できれば、年内には決めたいと考えています。今は本当に勝負の時です」

高山が投げた剛速球は、見事にミットに収まるのだろうか。

⇒〈その2〉へ続く

 


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