商社の仕事人(61)その2

2018年08月7日

日立ハイテクノロジーズ 相内尋也

 

日本の携帯電話の

アメリカ市場への普及に全力投球

 

 

人とのつながりを大事にしながら動き回る毎日

アメリカ市場向けの携帯電話の開発・生産から販売までの流れは、年に1回の、各メーカーから通信会社への提案から始まる。それに対応してメーカーが開発・生産し、通信会社が販売するという流れだ。その中で、アメリカに駐在していた相内の仕事は、日本の携帯電話メーカーから商品を仕入れ、それを通信会社に納入するのが基本だが、実際には商品企画の段階から関わっている。

「基本的にはメーカーが市場調査をしてデザインなどを決めますが、私たちは、お客様である通信会社の声を聞いて、それをメーカーにフィードバックします。時には、メモリの仕様であれば、ここまで容量を増やした方がいいと思うし、カメラの性能もここまで上げた方がよいのではないですか、といったようなアドバイスをさせてもらうこともあります」

そんな仕事の中で相内は、納入先である通信会社の生の声を聞くことを何よりも大事にした。メールや電話でできるかもしれないが、相内は敢えて現場に足を運び、直接コミュニケーションをとることを率先して行った。

「この部分で、もうちょっと性能のよいものが欲しいとか、そこの部分なら多少は妥協してもいい、というようなところは、実際に話をしてみないと把握できません。そこをきちんと理解していないと、仕入先のエンジニアにも自信を持って伝えられないんです。これではビジネスとして成立しません」

相内は、この信念を貫いた。事務所からニュージャージーにある通信会社まで車で2時間くらい掛かる。往復4時間だ。しかし自分が納得しなければ頻繁に出掛けていき、交渉を繰り返した。また、ニューヨーク事務所から30分くらいの所には、その通信会社と非常に良好な関係を築いている現地の商社があり、ここにも毎日のように打ち合わせに出掛けた。

「通信会社の人とも少しずつ信頼関係を作ることができました。時には、その商社の社長にお願いして、通信会社を説得してもらったりしたこともあります。お互い目標は同じですから、それを目指すには遠慮せず本音で話し合うことがとても重要です。商材は何であれ、ビジネスにおいては、人のつながりが本当に大事だということを実感させられました」

相内の信念と誠意が、周りを動かしていった。そしてビジネスも大きく動き始めた。

相内の仕事は営業と市場調査だけではない。開発サポートという仕事もあり、アプリケーションソフト等の挙動をも細かく確認しなければならない。まさしくエンジニアの仕事であり、最初は何をどうすればいいのかほとんどわからなかったが、仕入先のエンジニアと突っ込んで話をしているうちに、この分野も少しずつこなしていけるようになった。これも今までの人間関係からなせる業である。

まさに各方面においての活躍ではあったが、やがて大きな問題に直面する。

⇒〈その3〉へ続く

 


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