日立ハイテクノロジーズ 相内尋也
日本の携帯電話の
アメリカ市場への普及に全力投球
ジャパニーズ・ブランドを世界に売り込め
入社以来通信業界向けのビジネスに関わってきた相内は、日本の携帯電話の技術に自信を持っている。もっと広く世界に知らしめたいと考えている。しかし現状は、韓国やアメリカの勢いの前に、なす術もなく後退を余儀なくされている。今後、日本の携帯電話がグローバルブランドになる可能性はあるのだろうか。
相内は、「ある!」と力強く語る。
「どんなに技術が高くても、今のままでは、価格の面で勝負になりません。ですから、何よりもまずすべきことは、もっとたくさんの通信会社に携帯電話を買ってもらって、ビジネスの量をどんどん増やすことです。売り先が増えれば、それがやがては価格の低下につながっていくと思います。もちろん、それはこれから私がアメリカでしなければならないことの一つでもあります。
また、これは私の個人的な意見ですが、日本の携帯電話には万人にとって必要ではない機能がいろいろと付加されて来たために、価格がどうしても高くなってしまっているのだと思います。海外の携帯電話は、機能だけでなく、見た目とか、使い易さとか、とにかくユーザーにとって利便性のあるものという視点で開発されています。それに対して、日本のメーカーはよい技術を持っているのに、ユーザーの利便性をあまり考えていないように感じるところがあるので、ものすごく勿体ない気がします。そこさえ何とかしていけば、まだまだ世界に打って出られる力はあると信じています。ユーザーや通信会社もそういう風に捉えていますから、その声を集めて、仕入先に聞かせてあげるのです。実はそこにこそ私たちが果たすべき役割があるのです」
かつては世界を席巻した日本の技術。しかしいまやそれも瀬戸際まで追い込まれている。国内でしか通用しない技術はやがて世界の潮流からは取り残されてしまう。相内は、それに待ったをかけ、ジャパニーズ・ブランドに再びスポットライトをあてようと奮闘している。すでに立派なビジネスパーソンになった相内は、国の産業の成長・発展にプライドを持ち、さらに貢献するようなスケールの大きいビジネスを展開しようとしている。意欲満々のその瞳の先には、元気を取り戻した日本の企業の姿が映っているに違いない。
学生へのメッセージ
「私は技術が好きで、しかも人を使ってビジネスをしたかったので、商社を何社か回り、最終的には、非常に親近感の持てる面接をしてくれた日立ハイテクに決めました。大学院などでは、研究がなかなか実用化に結びつかずモチベーションを落としている人もいると思うので、将来的にはそういう人たちと仕事が出来たらいいなと思っていました。個人的には、自分を飾らず、自分はこうしたいというような情熱を素直に出せる人が好きです。何かを一緒にするに当たっては、そういうところが重要になるとと思うので、できれば素直にアウトプットのできる人に来て欲しいと思います。楽しみにしています」
相内尋也(あいうち・ひろや)
1981年神奈川県生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科卒。2007年入社。大学院では遺伝子組み換えや血液の研究をする。スポーツが好きで、学生時代には水球、フットサルに熱中し、アジアを中心として旅行にも出かけた。現在も週末には高校時代のチームメートと水球を楽しんでいる。
『商社』2013年度版より転載。記事内容は2011年取材当時のもの。
写真:葛西龍