商社の仕事人(74)その5

2019年05月24日

岡谷鋼機 山本征司

 

世界中から

最適の機械設備を集める

大学院卒の商社パーソン

 

メキシコで開拓した顧客を岡谷鋼機の国内事業所に紹介する

メキシコ岡谷は、2014年にできたまだ新しい現地法人だ。首都のメキシコシティから車で北に8時間のレオンという都市にあり、自動車メーカーやそのサプライヤーとなるメーカーの生産拠点が集まっている。ただ岡谷鋼機がこれまで主に取引をしてきたメーカーやその系列企業が進出するのはこれからだ。

「メキシコ岡谷の駐在員が訪問先の企業で話していたことが印象的でした。これまで岡谷鋼機は、特定の自動車メーカーや高炉メーカーが海外に出て行くのに合わせてその地域に事務所を置いたり合弁事業を行ったりしてきました。ところがメキシコはそういう絡みがなく、ゼロベースで始める初の商社海外現地法人です。自分に求められていることも、今までとは違って新しい事業の構築なのだと、気持ちを新たにしました」

顧客の開拓とともに、現地の仕入れ先も開拓している。メキシコでも同じく相手のニーズに合わせたきめ細かいビジネススタイルによる差別化に山本は手応えを感じている。

「ほかの商社がうちと同じことをしないのは、基本的にリスクを抱えることを避けるからです。ビジネスでリスクヘッジを常に考えるのは当然のことですが、その傾向が強まっています。その中で三国間調達や現地調達をしたり、初めてのメーカーを試したりするのは流れに逆行していますが、岡谷鋼機のメカトロ事業はリスクを取ることで経験を積み重ねることができると考えています。この方式だとコストが目に見えて下がるので、プレゼンテーションでもメリットが分かりやすくなります」

競合が真似してこないようなリスクを取るこのやり方について、社内で反対された覚えはないと山本は語る。特にメカトロ事業では、むしろどんどんやれと言われている。日系企業でも、その国で商売をする以上、ほかとは違うことをしなければ勝ち抜いていけないと考えているユーザーは多い。そういう相手と山本が出会うと、商談はとんとん拍子に進む。

メキシコ岡谷は立ち上がりから好調で、1年間で大手数社を含む30社以上と新しく取引を行い始めている。そうした新しい取引相手を、山本は岡谷鋼機の国内の部署にも紹介している。

「メキシコで知り合った企業の情報を日本に伝えて、そこから日本での関係も広がっていきました。これもまたいい傾向だと思っています」

幹部が集まる席で、メキシコ担当として最新動向を解説するなど、山本の名前が社内で知られる機会が増えている。技術にもビジネスにも通じた山本の「提案力」が、社内外で新しい流れを作り始めている。

 

【学生へのメッセージ】

「機械工学の中でも、自動車やバイクの車体の回りの空気の流れを予測するような空気力学を研究していました。ただ専門を突き詰めるほど、世界が狭くなっていきます。就職活動をするにあたって、それが本当に自分のやりたいことかどうかと考えるようになりました。製造業だけでなく機械関係に携わる商社も回り、岡谷鋼機で会わせてもらったのが刈谷支店で先輩となる人でした。顧客に代わってラインの設計までしてしまうようなすごい人で、生き生きと仕事をしているなと感じました。入社してからは、知らないことにぶつかり、本を読んだり人と話したりして知識を得て、自分なりに考えをまとめてまた修正することの繰り返しです。それを一生続けるしかありません。どんな進路を選ぶにしても、20代で入社して通用するようなことはあり得ません。30歳でも40歳でも50歳でも新しい事を学び、壁にぶつかり、また挑戦して行く事が大事だと思います。そして就活では、いろいろな社会人と会って話をしてくださいというのが、私から学生のみなさんへのメッセージです」

 

山本征司(やまもと・せいじ)

1981年、京都府生まれ。京都工芸繊維大学工芸科学研究科修了。専門は機械工学。2006年に岡谷鋼機入社。

⇒岡谷鋼機

 

『商社』2019年度版より転載。記事内容は2017年取材当時のもの。
写真:柏直樹

 


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