商社の仕事人(3)その5

2019年10月9日

ユアサ商事 清水拓也

 

いかに信頼される存在になるか。

そこから商社の仕事は始まる

 

 

350年間、信頼され続けてきたことのすごさ

これまでユアサ商事で清水がしてきたことは何だったのか。それは「信頼関係の構築」という言葉に集約できるかもしれない。口で信頼関係と言うのは簡単だが、これほど築くのが難しいものもない。

「一番最初の頃は、どうしていいよく分からなかったので、うちはこんなことやりますといきなり資料を出して見せたりしていました。たぶんその資料はすぐごみ箱に行っていただろうと思います。途中からは、話を聞いてもらうために、自分の趣味の釣りの話をしたりもしました。それで初めて会話になります。そのときは意識してやったわけではないのですが、結果として人間関係を作る材料になり、信頼関係につながっていったのだと思います」

いったんそうなれば、言えば分かってもらえるようになるという感覚を清水は持っている。

「例えばこの取り組みをすることで、これだけいいことがあるとしっかりと伝われば、味方についてもらえます。すると今度は、お互いにある程度の無理をお願いすることができるようになります。そんな関係を仕入れ先とお客さんとの両方に、今からもずっと作り続けていかなければなりません」

商流を超えて、直の取引ができる環境がどんどん作られている。それでも商社はなくならないというのが清水の見方だ。

「ユアサ商事は350年近くの歴史があります。江戸時代から現在まで、世の中が大きく変化してもずっと続いてきたことに、まず尊敬の念を覚えます。それは、きっといつの時代も人の役に立ち続けていたからです。自分自身そこに身を置くことができることに、喜びを感じています。信頼、絆という土台を自分がいただいて、どのような営業をしてそれを更に発展させるか。そこにユアサ商事で仕事をするおもしろさがあります。もちろんそんな環境にいても、あいつはあかんという存在ではだめです」

信頼関係を築いた同年代の販売店やメーカーの人がそれぞれの会社で出世をし、決裁権が増え、人脈が広がっていく。そのときに自分もユアサ商事で同じような立場にいて、また一緒に仕事がしたい。そうなったときに何ができるのか。それを清水は今から楽しみにしている。

 

 学生へのメッセージ

「人と接することは苦手ではないと自分でも思っていました。店頭販売をしてきたことも、商社で人間関係の構築に役立っています。ただ店長を経験せずに転職をしたので、そこだけは少し心残りです。就活で20社、30社回っても決まらないという人がいます。でもそれは、自分がだめだからじゃないということを、まず伝えたいですね。会社があなたを選ぶとともに、あなたも会社を選ぶという側面もあるからです。内定が出ないのは縁の問題で、あなたが自分自身の能力を伝えきれていないのではないでしょうか。だから対等の立場で話をするというスタンスで挑んでください。大きく見せることはないが、萎縮する必要もない。またそんな姿を会社も求めていません。ビジネスの現場でも同じことで、買っていただいている側面と、お客様に販売することで手助けしている側面もあります。その意味ではやはり対等なんだという意識を私は持っています」

 

ユアサ商事 清水拓也(しみず・たくや)

【略歴】
1981年大阪府生まれ。桃山学院大学経営学部を卒業後、釣り具の小売会社に3年間勤務。2007年4月にユアサ商事に入社。

 

『商社』2016年度版より転載。記事内容は2015年当時。
撮影:田屋真理子

 


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