商社の仕事人(4)その1

2019年11月25日

双日 阪本旬二

 

熱き魂をもって、

その一歩を踏み出せ!

 

 

【略歴】
1987年兵庫県西宮市生まれ。神戸市外国語大学国際関係学科卒。2011年入社。

 

入社二年目の勝鬨

「やったあ!」

昼下がりのオフィス街に、突如として大きな声が響きわたった。

周囲を歩いていたビジネスマンやOLたちがみな驚いたように振り向き、声のするほうに目をやる。その視線の先にいたのは、拳を高々と掲げてガッツポーズする、双日入社2年目の阪本旬二の姿だった。

そのころ林産資源部製紙原料課に所属していた阪本は、ある製紙メーカーに通いつめていた。国内有数のその製紙メーカーに、双日が扱うベトナム産木材チップを納品するため、阪本は先輩社員とともに猛烈なアプローチをしていたのだ。しかし、面談のアポイントを取ろうとしても、メーカー側は簡単には応じてはくれなかった。というのも、双日には長い歳月取引しているパートナー的な製紙メーカーがあったのだ。たとえ双日の顧客となったとしても、新参者であるがゆえに、いざというとき、既往のパートナーを優先するのではないかという危惧が、メーカー側にあったからである。

阪本はそんな先方の不安を取り除こうと電話口で長い時間をかけて何度も懇切丁寧に説明を行った。その甲斐もあってか、阪本はようやくメーカーとの面談までこぎ着けることができた。そして、その面談の場でも、阪本は「大丈夫です。心配いりません。私に任せてください」と繰り返した。もちろん、阪本はそんな口先の勢いだけで営業を行ったわけではない。ベトナム産の木材チップを使った場合のメリットをしっかりと伝え、また、ベトナムにおける双日の持つネットワークや情報の確かさなども、折に触れて口にし、双日との取引がメーカー側にとっていかに有益であるかを印象づけた。

こうした面談を幾度となく行ううちに、メーカーの担当者もようやく腰をあげてくれた。

「そんなに言うのなら、一度、現地の工場を見てみようか」

双日の扱うベトナム産木材チップは業界では知らないものがないほど有名であり、実はそのメーカーもかねてから興味を抱いていたのだ。

ベトナムでの視察を無事に終え、東京に戻って数日後のこと、今度はメーカーの担当者から阪本に、「話したいことがあるから来てほしい」という電話が入った。先輩と一緒に大急ぎで駆けつけた阪本に、担当者はこう告げた。

「ベトナム産のチップは、君たちから買いたい」

その言葉は契約成立を意味していた。阪本は言う。

「この契約を結んだとき初めて、会社や課に本当に貢献することができたと実感しました。そういう意味で、これは双日にとっても、私にとっても大きなマイルストーンを打ち立てた契約でした」

面談を終えた阪本はメーカーの本社ロビーを出るやいなや、ガッツポーズとともに雄叫びをあげた。それはまさに勝鬨の声だった。阪本はあまりの喜びの大きさに、周囲の目を憚ることなく、先輩と二人、熱くハグをしたという。

⇒〈その2〉へ続く

 


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