商社の仕事人(4)その5

2019年11月25日

双日 阪本旬二

 

熱き魂をもって、

その一歩を踏み出せ!

 

 

垣根を越えて、点から面へ

阪本はまだ若手の部類ではあるが、国内製紙メーカーの主担当者として、すでに木材チップビジネスの将来についても考えている。リーマンショック以降、どのメーカーもベトナム産木材チップを求めるようになり、双日の製紙原料課としてもビジネスチャンスが急速に拡大しているのは事実である。だが、その一方でメーカー各社も商社に頼ることなく、独自に現地に進出して、原料となる木材チップの調達を始めている。

「昔は商社とメーカーでは、市況等、現地に関する情報のギャップが大きく、そのギャップを埋めるのが我々商社の機能・役割でした。もちろん、今でもベトナムに関して言えば、双日は他の追随を許さないほどの情報とネットワークを持ち、ベトナムでのビジネスを熟知しています。ただし、現地にスタッフや駐在員を持つメーカーが増えたことで情報量の差がなくなりつつある今、自分たちが得た情報をメーカーに、いかに誠実に伝え、どれだけ新たな提案ができるかが求められているのです」

他の商社もさまざまなビジネスの方向性を模索している。たとえば、現地企業に出資してその配当で儲ける商社もあれば、川上から川中、川下まで全機能を確保・コントロールしてバリューチェーンを作ろうとしている商社もある。それは利益が出る部分、出ない部分を含みつつ、バリューチェーン全体で利益を出していくという考え方である。

「現在の双日は、まだ単発勝負でしかありません。木材チップでは群を抜いた強さがある反面、パルプ・製紙の販売については強みを発揮しきれていない部分もあります。しかし、そろそろ攻めに転じる季節が訪れたと感じています。今後は、海外で山林を買い、チップ材を植林し、製紙工場を自社で作るもしくはM&Aで獲得し、 小売りをすることも考えられます。また、エネルギー本部などと一緒にバイオマス発電など、エネルギー分野への進出も考えられます。そうなると、とてつもなく大きいプロジェクトになると思います」

阪本は日常業務をこなしながら、持ち前の熱い魂で、未来への一歩を踏み出そうと考えている。総合商社・双日のまさに各本部の垣根を越えた総合力を用いて、まだ点でしかないビジネスを線、面へと広げようとしているのである。

「双日が誕生して十年余り。仕事はかなりタフですが、辛いと思ったことは一度もありません。なぜなら、僕らが新しい双日ビジネスを作っているのですから」

こう語る阪本の瞳は、今も熱く燃えている。

 

 学生へのメッセージ

「学生の皆さんには、あえて〝ごちゃごちゃ言わんとやらんかい〟と言いたいですね。皆さん、〝ノー〟と言うための理由を探しているような気がするのです。そうではなく、ポジティブに物事を捉えたほうがいいと思います。学生時代は、少しでも興味を持ったら、〝行く、見る、知る〟です。その結果として、さらに興味が出てくると思いますので、また〝行く、見る、知る〟を繰り返してください。私の知り合いには、就職活動が始まってから、アフリカに留学に行った人間もいます。思い立ったら即行動です。双日は伝統と若さが共存する会社です。限りない可能性と限りないビジネスフィールドがありますから、限界ぎりぎりのところから、さらに一歩踏み出せる忍耐力と行動力があると思う方、ぜひ双日で一緒に未来を作っていきましょう」

 

阪本旬二(さかもと・しゅんじ)

【略歴】
1987年兵庫県西宮市生まれ。神戸市外国語大学国際関係学科卒。2011年入社。

 

『商社』2016年度より転載。記事内容は2014年取材当時のもの。
取材・文:大坪サトル
撮影:白井智

 


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