商社の仕事人(6)その1

2020年01月6日

三菱商事 鐵屋圭一

 

未来は、

足元の一歩から始まる

 

 

【略歴】
1981年、米国ヒューストン生まれ。ケンブリッジ大学大学院修士課程修了。2006年入社。

 

洋上物流のスペシャリスト

1969年11月4日―。
この日、1隻の大型船が横浜港へその雄姿を現した。大型船の名前はポーラ・アラスカ号。米国アラスカからLNGを積載し、太平洋を横断してきた輸送船である。

LNGとは、液化天然ガスのことで、メタンを主な成分とする天然ガスを、マイナス162度まで冷却して液化させた無色透明の液体である。天然ガスは液化することによって、体積を600分の1に凝縮させることができる。それゆえ、天然ガスを大量に輸送するにはLNGが最適なのである。また、天然ガスは石油や石炭に比べ、燃焼させた場合、二酸化炭素の排出量が少なく、さらに液化される段階で不純物が取り除かれるため、燃焼時に硫黄酸化物や煤煙を排出しない。そのため、LNGはクリーンエネルギーの代名詞にもなっている。

米英による世界初のLNG洋上輸送に遅れること10年。しかし、ポーラ・アラスカ号の入港は、その後、世界最大のLNG輸入国となる日本における初めてのLNG輸入という記念すべき瞬間だった。そして、今から45年前の、このLNG輸送船日本初入港に際し、輸入代行企業として携わったのが三菱商事である。以来、三菱商事は世界のさまざまな国や地域で、天然ガスの炭鉱・生産から液化、輸送、トレーディング、気化に至るLNG事業のバリューチェーンを構築している。そして、このバリューチェーンのうち、洋上輸送事業の最前線で活躍しているのが、三菱商事エネルギー事業グループの天然ガス事業本部事業戦略室に所属し、入社八年目を迎えた鐵屋圭一である。

「天然ガス事業本部には、ブルネイ、マレーシア、インドネシア、ロシア、中東など、わが社が権益を保有している地域、新規事業部等で区別された10の事業部があるのですが、私が所属している事業戦略室はシェアドサービス部門として天然ガス探鉱・上流開発、ファイナンス、船腹等の天然ガス事業における専門知識を本部横断的に提供しており、私はLNG船腹担当として、既存LNG船の管理、新規船腹調達、短・中期リースなどの案件について、船舶に関する知識と経験をもとにベストソリューションを提供するというコンサルティング業務、並びに機械グループ船舶部とも連携し、船腹調達に向けた実務全般を行っています」

三菱商事では、巨大な事業やプロジェクトに関して、社内の各グループや事業本部から精鋭たちを集めて横断的に取り込む場合がある。そのLNG事業の洋上輸送におけるスペシャリストとして、機械グループの船舶・宇宙航空事業本部の担当者の中から抜擢されたのが、鐵屋圭一なのだ。船舶事業に関する知見、論理的思考、プロジェクト管理能力においては社内でも認められている鐵屋だが、一人の商社パーソンとしてその評価を勝ち得るまでには、少なからぬ葛藤とたゆまぬ努力があった。

⇒〈その2〉へ続く

 


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