商社の仕事人(7)その5

2020年02月10日

豊島 市町 紀元

 

気がつくと、

ライバルはすべて消えていた

 

 

〝ポスト市町〟を育成せよ!

こうして、百貨店メンズブランドを扱う東京6部1課は、現在、豊島の「川下」分野を代表する看板部署にまで成長した。市町は豊島の営業社員の中でいわば〝伝説〟的な存在となった。そんな市町を入社2年目に大手アパレルメーカーの担当に抜擢した部長は、数年前、自身が関連会社に出向する際の歓送会の席で、市町の両肩を正面から両手でがっしりと掴みながらこう言った。

「市町、お前、本当に成長したな」

部長に褒められたのは、それが最初で最後だった。実は部長にとっても市町の抜擢は大きな賭けだった。かつて部長は「市町、お前しかいない。お前ならやれる。俺の勘だけど」と語ってくれたことがあった。その期待に、市町は見事応えたのである。

市町は入社以来、大きな失敗をした記憶はないという。大手アパレルメーカーにしても常に成功の連続だという。その理由について、市町は「しつこい性格だから」と笑う。

「成功するまで絶対に諦めない。瞬間的に負けたとしても必ず巻き返して成功させるんです(笑)」。

今、豊島を志して入社してくる若い社員たちを見ながら、市町は時々自分の入社経緯を振り返ることがある。果たしてあのまま他社に入っていたらどうだったのか…。

「まあ、それなりにやれたとは思うんです。ただ、大学時代の同期と月に何度か会うんですが、他社の話を聞くとスピード感が全然ない。たとえば急遽明日から出張ということになると、豊島では社内LANで申請すればすぐに出張費が下りる。他社は1か月前から申請しなければ出ないんです。それはおかしい。豊島は僕のように入社2年目でも決定権を与える仕事をさせてくれる。納期も価格もすべて自分で決める。物を売ってから現金の回収確認まで全部する。責任もあるけど、経営的感覚も身につく。他社は係長、課長、部長のスタンプラリーをしなければ何も決定できない。うちみたいな会社、たぶん他にないでしょう」

市町は入社を勧めてくれた人事課長の「この会社でこそ君は輝くことができる」という言葉を思い出す。

「たしかにそうだ。豊島で良かった!」

市町はつくづくそう思う。そんな市町は現在、〝ポスト市町〟の育成を目指している。自分一人でいくら稼いでも限界がある。自分を乗り越えていけるような人材を育てなければ、会社の未来はない。「幸い、面白くてやる気のある若手が入社してきているので期待している」と市町は言う。豊島から新たなレジェンドが次々と生まれる日もそう遠くはないだろう。

 

学生へのメッセージ

「僕の経験から言うと、学生の皆さんも最初は入りたい業界があると思いますが、その業界だけでなく、いろいろな業界のいろいろな会社を見てほしいと思います。その中にこんなに面白いところがあったんだって気づくことがあると思うんです。志望はどんどん変わってかまいません。好奇心いっぱいに、いろいろな情報を得ることも商社を志す人に必要な資質だと思います」

 

市町紀元(いちまち・のりもと)

【略歴】
1977年北海道生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。2000年入社。趣味はミシュランガイドに掲載されている名店巡りとマッサージ通い。

 

『商社』2017年度版より転載。記事内容は2015年取材当時。
取材・文:大坪サトル
撮影:葛西龍

 


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