蝶理 菅原 耕平
めげず、臆せず、
ビジネスの開発・拡大に
挑み続ける
「アプローチしてみて欲しい」の一言が始まりだった
入社3年目のある日のことだった。菅原は、すでに取引のある大手化学品メーカーを訪ね、懇意にしている担当者と面談していた。いつもの話が一段落したところで、菅原はずばりこう切り出した。
「いま取引いただいているものとは別の製品でも構いませんが、御社で今後注力していきたいと思われている商材や分野はありますでしょうか」
すると、担当者はまるでその一言を待っていたかのように、菅原の目を覗き込みながら答えた。
「実はね、トルコにK社といって、世界最大手のタイヤコードメーカーがあるけれど、当社とはまだ取引がないんだ。ここにアプローチしてみて欲しいんだけどなあ」
「それは願ってもない話です。調べてみます。やらせてください」
未知の業界、しかも初めて聞く社名だったが、一瞬のためらいもなく即答していた。菅原にしてみれば、「新規の話で、失うものは何もなかったから、断る理由がなかった」のだ。
菅原は帰社するとすぐに上司に報告した。菅原は入社2年目頃から、ある程度の裁量権を持たされていた。上司は「菅原、大丈夫だろうな。まあ面白そうだから、やってみたらいいじゃないか」と言ってくれた。「もちろんです」菅原はすぐさま動き出した。
まずは、K社に電話してみた。最初は門前払いだ。内容や手段を変え、何度も連絡を試みるうちに、どうにかK社において購買に責任を持つ「キーパーソン」が誰であるかを特定することができた。作戦通りだ。そこから電話やメールなどによる具体的な商談が始まった。はじめは某化学品メーカーの原料をK社に販売するという限定的な話だったが、さまざまなツテを使い、情報を収集した結果、K社ではその原料以外にもさまざまな原料を使っており、さらに、K社はインドネシア、タイ、アメリカ、ブラジルなどにも工場を持っていて、それらの工場でも同じ原料を使っていることが分かってきた。菅原は、自らが目指していた「横展開」を実現する絶好のチャンスだと直感した。
「当社の現地法人などにも協力してもらい、日本のメーカーの原料だけではなく、中国や東南アジアなどのメーカーからも、品質が良く、価格も安い原料の新規ソースを探索することにより、国にとらわれないグローバルな調達ルートを構築できれば、大きなビジネスになります。だから、何としてでも成功させたいと思いました」
しかし、なかなか思い通りにはいかなかった。原料販促計画がスタートしてからすでに1年が経とうとしていた。菅原は、この状況を打開すべく一気に動き出した。状況が困難であればあるほど燃えるのが菅原だ。
⇒〈その3〉へ続く