商社の仕事人(12)その4

2017年03月30日

稲畑産業 千田淳平

 

突きあたった壁を

自己変革で乗り越え、

海外へ新たな展望を広げる

 

伸長するニトロセルロースの輸入窓口を任される

Nobel NC Co., Ltd.からのニトロセルロースの輸入窓口を任されたのは、入社5年目。千田の地道な自己変革が評価されてのことだ。ニトロセルロースは速乾性、耐摩耗性に優れた塗料用原料。2009年に稼働を始めたタイNobel NC Co., Ltd.社での生産が本格化。販売も順調に拡大している中であった。

「原料の輸入は客先からの需要を見越して、適正な在庫量を見極めながらしかるべきタイミングで発注する。また市況に応じた価格の交渉も必要です。私が担当しているのは主に、そうした一連の状況を考えながら輸入全体をコントロールする仕事。またニトロセルロースの拡販についても取り組んでいます」

商社を目指した動機の1つ、海外との取引。千田は現地タイにも足を運び交渉を行うようになり、当初掲げた自分のテーマにようやく1歩近づいた形だ。

「同期でも早い人は1年目から海外に出張していましたからね。実は自分のなかでずっとくすぶっていた思いはありました」

ただし海外相手の発注管理は、国内とはまた違った難しさもつきまとう。千田が当初突きあたったコミュニケーションの問題も、その1つだ。

「言葉が違うので、特に分かりやすく意思を伝える必要があります。ずばりいま何が問題で、当社としては何をしてほしいか。少ない言葉で単純明快に伝える工夫を心がけています」

いっぽうで千田はそれまでの塗料、インクの販売も、60社近い顧客を抱えている。毎月のルーティンワークである輸入のコントロールに、時間を割く余裕はない。

「輸入の担当を引き継いでから需要に関するデータを客観的な視点から管理する仕組みを考えて、単純に適正在庫を算出できるようにしました。以前は鉛筆片手に数字とにらめっこしていた作業ですが、いまはその都度5〜10分ほどで処理できるようになっています。着実に収益を上げていくには、在庫コストの削減といった管理ごとの仕組み作りが欠かせないですからね」

ルーティンワークは最大限労力を減らす代わりに、拡販では足を使った情報収集を惜しまない。これも千田が自己変革で身につけた優先順位の発想だ。

「ニトロセルロースで当社は大きな国内シェアを持っていますが、顧客はリスクヘッジのため供給先を分散させる必要がある。そうしたなかで利益を最大化していくには、各社の価格や輸出入の動向といった情報が欠かせません。そこで取引先やNobel NC Co., Ltd.のセールスマネージャーとの関係を通じて情報を得ます。やはりここでも重要になってくるのは、先方からの信頼。信頼できない相手にはなかなか情報を出してもらえませんから」

⇒〈その5〉へ続く

 


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