トラスコ中山 高田真由美
回り道をしながらも
15年目に支店長に
あんたに任せてたら、うちの会社はもうあかん
外回りに出て1か月余り経った頃、ある販売店様の年配の部長から「あんた、どれだけメーカーとパイプがあるの?」と聞かれた。
「メーカーは言うことを聞いてくれる? くれないでしょう。だったらメーカーと太いパイプがあって物が言えるベテランの営業担当に代わってほしい」
なるほど、多くのメーカー様と太いパイプを持たないと営業担当として認めてもらえないのかと気づかされた。太いパイプがあるというのは、メーカー様に言われるがままにならず、必要に応じて押しの強い交渉もできるだけの関係を築いているということだ。
「それからは、自分が販売店の仕入れ責任者になったつもりで交渉するようにしました。押しが強いというのは、以前の文具カタログの時のように、こちらの要求を押し付けるだけの一辺倒なものではありません。トラスコ中山はメーカー様に仕入れをさせてもらい、それを商品として販売している会社ですから、販売店様と同様に、メーカー様も大切にしなければいけません。本社にいる間に経営陣のそばにいて、そのことを学びました」
ではどうやって、押しの強い交渉ができる関係を作ったのか。高田は仲のいい人を作ることを意識した。いつも同じ相手に価格交渉や些細な事でも相談をするようにして、関わりを持つ機会を増やしていった。2年間それを続けていくと、いざという時に頼みごとをしても協力してくれるメーカー様が増えていった。
「礼節を重んじて丁寧に対応することが前提です。どうしても引けない場面では、状況をきちんと説明しお願いすると、助けてあげようかなという気持ちも湧いてくるのが人間です。みなさん、比較的好意的で、関係が気まずくなることはまずありませんでした。たまにほかの営業の人がメーカー様にエラそうに言っているのを見ると、そんな言い方をしたら損なのになあと思っていました」
その販売店様の部長には、業界のことや商品のことなども含めて教わることが多かった。
「最後まで、あんたに任せてたらうちの会社はあかんと言われ続けました。ベテランの方なので、いつまで経っても、私が頼りなかったんでしょう」
歯に衣を着せずに指摘してくれるこうした取引先も、高田にとっては貴重な教師だった。
⇒〈その5〉へ続く