商社の仕事人(16)その1

2017年04月24日

岩谷産業 西口眞敬

 

水素エネルギー社会に向け、

営業というフィールドで

夢を具現化する

 

【略歴】
1985年大阪府生まれ。奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科卒業。

 

産業用の液化水素導入が営業としての初ミッション

学生時代から、「商社」そして「エネルギー」という2つのキーワードに強く魅かれていた西口眞敬。その彼が産業用水素の営業担当に就いたのは2012年のことだ。

「水素の用途というと、多くの方は具体的なイメージが湧かないかもしれませんが、実際はガラス、半導体、鉄鋼など、様々な業界で利用されています。配属されて最初に担当を任されたお客様も、磁性体の粉末を作る過程で必要な圧縮水素を当社から購入していました。そこへ新しく液化水素を導入する案件が、営業としての初仕事でした」

近年水素は、究極のクリーンエネルギーとして世界的に注目を集める次世代のエネルギー。その拡販という営業としての初ミッションに、西口は奮い立った。

「大学時代の研究との関わりから、エネルギー関連でスケールの大きな仕事がしたいという思いがずっとありましたから、この仕事には燃えましたね」

入社3目で初めて任された液化水素の導入は、前任の担当者が進めていた新規案件。もともと岩谷産業が圧縮水素を納入していたが、水素の使用量が増えていると同時に設備も老朽化により替え頃を迎えていた。そこで新しく液化水素に替えませんかと、水素だけでなくその設備一式も含めての提案を初期段階から行っていったのである。

気体に比べて液体は体積が圧倒的に小さいので、圧縮水素より液化水素の方が顧客にとっても在庫管理や調達などの面でメリットが大きい。最初は思惑通り先方の担当者も乗り気だったが、西口の意気込みと裏腹に、交渉は予想以上に長期間に及んだ。

そもそも液化水素を新しく導入するビジネスは、部品などを納める取引とスケールが違う。顧客の側でも慎重に経営会議を重ね、細部まで検討し尽くした上で結論を出す案件だ。当然ながら成立に至るまで、長いやり取りを要する。

「それにも増して、先方は非常に慎重な社風の会社でした。過去に大雨による水害の被害を受けたことがあり、災害対策などの面で通常よりも高いハードルを設定していました。液化水素の設備を設置しようとしていたのがまさにその被害にあった場所だったので、なおさらこちらもその高いレベルの要求に応えなくてはいけませんでした。こちらも慎重を期すのは当然ですが、同時に担当として早く話をまとめて成果を挙げたいという思いがある。そうした中で先方の要望を聞き、どういった形なら納得してもらえるか。その交渉を重ねていきました」

⇒〈その2〉へ続く

 


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