岩谷産業 西口眞敬
水素エネルギー社会に向け、
営業というフィールドで
夢を具現化する
大学院での半導体研究者から商社営業マンへ
岩谷産業に入社する以前は、奈良先端科学技術大学院大学の物質創成科学研究科で研究にいそしんだ経歴を持つ西口眞敬。といっても研究室に閉じこもるのでなく、バスケットボールにも打ち込むなど活動的な学生時代を過ごしている。
学問の世界でも水素をはじめとする代替エネルギーに関心を持っていたという彼だが、将来としての進路に選んだのは商社の営業だった。そのビジネスの最前線で、研究者時代とはまた違った形でエネルギーに取り組んでいる。
「最初に理系の研究の道を選んだのは、学問的な基礎知識をしっかり身につけたいと思ったからです。大学では太陽電池の研究を、大学院では半導体素子を研究していました。しかし、天然資源を輸入に依存している日本、そして世界の現状を考えた時、何か新しいエネルギーを生み出す仕事にチャレンジしてみたい、という思いが強くなりました。そこで、研究室にこもって1つのテーマを深掘りするより、『自分の夢を、実現したい未来を形にできる商社というフィールドで思いっきり活躍してみたい』と、そんな思いからこの業界に飛び込みました」
西口が最初に配属されたのはガス・技術開発室という技術部隊だった。その中でも、室長の直下に置かれた「プロジェクト担当」というチーム。そこでマーケティング的な要素も含んだ室長の特命事項を具現化するのが役目だった。
「最初の1年半は、水素の海外生産に関する基礎調査を行いました。当社が将来海外で水素を事業展開することを想定し、どんな可能性が有り得るかをリサーチしてまとめる仕事です。それが終わると今度は1年ほど、2013年に稼働を予定していた山口の液化水素製造プラントの建設プロジェクトに参加しました。当社は2006年に大阪、2009年に千葉で液化水素製造プラントを立ち上げましたが、その中心になったのが我々プロジェクト担当でした」
営業を志望していた西口にとって、期待と異なる辞令だったガス技術開発室への配属。だが与えられたミッションに全力で取り組んだ西口は、山口での液化水素製造プラント事業に没頭するようになる。
そこへまた新たな転機が訪れたのが、入社3年目の4月。これから山口に長期滞在してプラント建設の管理を行おうとする矢先だった。
「水素を専門的に扱う営業部門への異動が決まりました。異動先は産業ガス・機械事業本部の水素ガス部。事前に何の話もなく、辞令は青天のへきれきでした。念願が叶った形ですが、山口のプラント建設が開始される直前の時期だったので少し複雑でしたね。その頃はもうプラント建設を終えるまで異動したくないという気持ちでしたから(笑)。営業はやりたいけどプラント建設も最後までやり遂げたいと、うれしさ半分のような心境でした」
だがこのプラント建設で培った経験が、営業という新たな仕事で西口にとって大きな武器となった。
「液化水素導入の案件でも、専門的な設備の話は技術の部隊が同行して説明してもらいます。しかし場合によっては営業が1人で網羅的に説明したり、回答をする必要もある。そうした時、同じ水素を扱う技術の部隊で2年間を過ごした経験が強力なバックグランドになってくれています」
何事も貪欲に追究して損をすることはないのだ。
⇒〈その4〉へ続く