商社の仕事人(21)その3

2017年05月31日

長瀬産業 竹田成宏

 

「生活関連事業」という

新しいビジネスの柱を建てる

 

 

入札条件クリアのため休日返上で走りぬく

財務部での3年間で、そのときにやるべき仕事はすべてやりきったと感じた竹田は、新しい活躍の場を求めて部署異動を願い出た。配属されたのは、経営企画室。3か年の中期計画の作成や、単年度計画の進捗のフォロー、投資基準の作成や実行管理と政策作りを行う部署だった。

「経営企画室在籍中に、銀行へ5か月間ほどの出向も経験させてもらいました。長瀬産業でも投資案件がいくつもあるため、その際にどのようにして業務や業態を判断するのか、投資先の会社をどう分析するのか、その調査の手法などを勉強させてもらいに行きました。私は就職活動の際に商社と銀行を受けていましたが、商社で3年働いてから銀行の中に入ってみると、カルチャーの違いを痛感しましたね。銀行という異文化の中で、そこで働く同年代の行員の仕事に対する意気込みや姿勢に触れ、学びと刺激の多かった体験ですね」

こうして経営企画室で経験を積んでいた2011年1月、あの驚きのニュースが飛び込んでくる。林原が会社更生法を申請。

「これは、買収に名乗りを上げるしかないということになり、経営企画室の統括と私で担当することになりました。〝買収〟というプロジェクトは、社内でもあまりおおっぴらに語られることではなく、経営企画室でもオープンではなかったので、実働部隊として動く私の仕事量は半端なものではありませんでした。その年の8月に再建スポンサーに長瀬産業の選定が確定するまでの6か月間は朝から晩までこの案件にかかりっきりの毎日でしたね」

1次入札の時点ではおよそ80社が名を連ねたというこの買収。裁判所が管轄する会社更生法に対して、提示される条件をスピーディーにクリアしていかなければ次の入札に漏れることになる。その業務を行うのが竹田だった。

また、長瀬産業にとっても史上初めてとなる規模の案件だったため、当然ながら社内でも慎重を求める意見が出ていたという。リスクや採算をシビアな視点からリサーチする「ネガティブチーム」も設けられたという。

「最終的には買収のメリットは大きいという結論に至り、8月3日に再建スポンサーに選ばれることができました。その後も、更生計画を作り、11月18日に更生計画を提出しました。個人的なことですが、この1週間前に私は結婚をしたんです。つまり、休みなしで突っ走っていた時期と、結婚準備が重なっていたわけで(笑)。自分の人生の中で、あれほど密度が濃かった時間は今でもありませんね。だからこそ、林原に対する思い入れも、私自身、とても強いものがあるんです」

⇒〈その4〉へ続く

 


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