メタルワン 池田賢太郎
大切なことは
〝自分がどう行動するか〟。
相手の国や言語は関係ない
国内営業で培われた交渉力
入社後に配属されたのは大阪薄板部・薄板第一課。自動車や建設機械、家具などの大手メーカーへの鋼材供給を担当した。
「今思えば、大阪の人間味溢れる温かい雰囲気は、社会人1年目の自分にとって非常に良い環境でした」
しかし、入社2年目に姫路支店に異動、環境は一変する。
「驚いたことに、姫路支店に常駐している営業社員は3年目の先輩と2年目の私のみでした。取引先は大手電機メーカー。数十億円にも上るビジネスをたった2人で担当していたのです。事務職業務のマネジメントも含め、あらゆる仕事を2人でこなしていました」
池田が最も苦労したことは、鉄鋼メーカーと取引先、両者の意見を調整することだった。顧客からの「納期を早めてほしい」という要求に頭を抱えることも少なくなかった。当時は鉄鋼需要が非常に旺盛で、どの鉄鋼メーカーもフル稼働していた。納期の前倒しなど、そもそも無理な話であった。それでも、鉄鋼メーカーに粘り強く交渉に出向き、生産のタイミングを少しでも調整してもらうなどして顧客の要望に応えた。
「『相手が何を求めているか』『どんな価値を提供できれば喜んでもらえるのか』ということを常に考えながら、来る日も来る日も足しげく通いました」
そんな池田が取引先と懇親会をしたときのこと。
「これまで何度も『帰れ!』と追い返されたことがある担当者から、『お前はよくやってくれている。ありがとう』と言われたことがありました。ようやく少し認めてもらえた気がして、感無量でした」
自分とはバックグラウンドが異なる人間に対し、どこまでも真摯に接し、根気強く距離を縮める池田の営業スタイルは、間違いなく国内営業で培われた。そしてこの営業スタイルをベースとする交渉力が、後に海外で活躍する大きな武器となる。
⇒〈その3〉へ続く