商社の仕事人(22)その3

2017年06月7日

メタルワン 池田賢太郎

 

大切なことは

〝自分がどう行動するか〟。

相手の国や言語は関係ない

 

〝常に目標を持ちつつ、日々の業務を全うすること〟が自分を夢に近づける

2011年冬、池田は東京本社の海外営業部 厚板・半成品課に異動することが決定した。池田が学生時代から志望していた、海外のインフラビジネスを取り扱う部署である。実は池田は、姫路へ転任してから2年半、上司や他部署の先輩など周囲の人間に対して、「貿易をやりたい」「建築や大型船舶に使われる『厚板』を扱いたい」と将来のビジョンを語っていた。

「やっぱり、日々の業務に忙殺される中でも、常に目標を持っているということは大事だと思います。だからこそ、夢に近づくことができる。今でもそう感じています」

目の前の業務に対して誰よりも愚直に取り組み、周囲からの信頼が厚かった池田だからこそ、通った希望・異動なのかもしれない。
期待を胸に異動した池田はまたもや驚くことになる。配属初日からインドに出張することになったのだ。

「これからどんな刺激が待っているのか楽しみになると同時に、〝やってやる〟という気持ちで身が引き締まりました」

担当するのは中東、西南アジアなどの国々。海外営業では国内と違って、1回限りの契約が基本である。つまり相手が得意先であっても、契約が継続する訳ではない。1つひとつの契約ごとに細かく条件を決める必要があり、競合他社の数も多い。このようにハードな世界で契約を取っていくには、瞬発力、行動力、そして情報力を常に研ぎすませておく必要がある。この点で、国内営業で鍛え上げられた池田の〝営業感覚〟〝交渉力〟が役に立った。取引先からは目を離さず、足しげく通う。さらに、例えば取引先の競合企業の状況や、海外を含む様々な鉄鋼メーカーに関する情報、鉄鋼の価格市況のような全世界的な情報をしっかり掴むことも怠らない。多少無理を言われても動じない度胸と、これまでの経験からくる自信を支えに、インド最大級の建設機械メーカーへの厚板供給、ブラジルの世界的資源メジャーへの鉄道レールの販売取引等、さまざまな大型案件に携わってきた。そして2013年、池田に更なる挑戦の舞台が待ち構えていた。前述の日印国家間プロジェクトである。

⇒〈その4〉へ続く

 


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