稲畑産業 伊藤 豪
激動の液晶パネル市場を
行動力と誠実さで勝ち抜く
事業買収した工場の切り盛りまで引き受ける
「入社したらすぐ現場に出て働きたい」。そんな期待通り、2カ月目から顧客と仕入れ先の間を奔走していた伊藤。それを見ていた上司は、さらに新しい担当を次々に任せていく。入社1年で伊藤が担当営業として携わることになったのは「LED封止材」。LEDの表面を保護する樹脂=封止材の販売だ。
それまでの仕事と大きく違うのは、稲畑産業がメーカーとして封止材を製造・販売するビジネスだということ。伊藤が担当する4年前に事業買収し、新たに立ち上げた委託工場が、その生産現場だ。チームは責任者の上司以下、品質管理2人と開発が1人、そして営業が伊藤1人。年間売上は3億円でも利益率は高い。買収から間もないため体制固めはまだ途上だが、チームは売上倍増というスローガンの下、事業に取り組んでいた。
ACFの案件では、伊藤は仕入れ先であるメーカーに数量や期日の管理を促す立場。だがLED封止材では自分がメーカーの立場で、原料の仕入れから製造、出荷管理まで責任を持たなくてはいけない。工場はただ伊藤が段取りした通りに製造するだけだ。そのいっぽうで顧客の管理も、新しく営業となった伊藤に担当が回ってくる。このLED封止材事業で稲畑産業がアカウントを持つ顧客は、日本企業の海外法人も含めて約15社。伊藤は2年目からもうその全てを1人で切り回していた。
「悪い癖なんでしょうかね、頼まれると断わらないでとりあえずやってしまうんですよ(笑)」
伊藤は飄々と振り返るが、納期をクリアするための苦労は並大抵ではなかった。突然の発注、原料の入荷遅延、それに人的ミスによる発注漏れなど、ありとあらゆる理由で遅れが発生する。それらに素早く対処しながら、伊藤は無数の顧客の注文に応えていった。
⇒〈その5〉へ続く