商社の仕事人(26)その4

2017年07月6日

トラスコ中山 本間三紀

 

自然体で、

自分の強みを活かす

 

 

経営会議で社長の言葉を生で聞いた

経営会議の議事録作成も、本間にとっては今も印象に残る仕事のひとつだ。

「『よい会社に入ったね』とほめられる人生よりも、『よい会社に育てたね』とほめられる人生を歩んでもらいたい。これは就職活動中に会社案内で目にして、今でも好きな社長の中山の言葉です。いろんな社長語録があり、どうしてこんなに次々にいい言葉が出てくるのだろうと思っていました」

経営会議はその社長の中山を始め経営陣の言葉を生で聞ける、大変恵まれた環境だ。議事録は速やかに全社員に発信される。言葉を聞いたままを記録しても、真意は伝わらない。議事録を作成するにあたり、本間は経営会議に出席中は発言を録音せず、その場でパソコンに打ち込んでいった。そのときに集中した方が、本質を理解できると感じたからだ。経営会議は基本的に月1回、朝から夕方まで1日中開かれる。終わるとぐったり疲れるが、その後も何日もかけて整理して読みやすくする作業を繰り返した。〝中山イズム〟を直接からだの中に流し込んでいったのだ。今も社外の人と話をするときに、当社の考えはこうですと迷うことなく伝えることができる。

 

大阪で4年半を過ごした後、本社移転に伴って経営企画課も東京に場所を移した。

この頃上司から「トラスコ中山のCSRを固めたいので考えてほしい」というテーマが与えられた。ひとことで言えば、自社の社会的責任を明確にする活動である。ちょうどCSRの策定に取り組む企業が増えていて、トラスコ中山でもまさにその作業を始めたところだった。

まずはCSRについて解説した本を読んで基本的な考え方を頭に入れた。CSRについてのセミナーにも参加し、先進的な企業を回って、活動内容やベースとなっている考えを聞いて回った。こうした情報収集はやはり東京の方がやりやすい。以前より社外の人間と会う機会も増えた。本間は貪欲に吸収していった。

「なにもないところから何かを生み出すのは難しかったですが、一方では社内外のいろんな人を巻き込んで新しいことを始めるのが、とても楽しい経験でした。CSRの大枠までを考えて、あとの肉付けはバトンタッチしましたが、その一環で〝女性社員がより活躍できる環境づくり〟について取り組んだことは、印象的でした」

7年ぶりに営業ラインに復帰

トラスコ中山では、支店長や課長等の責任者クラスになるにはボスチャレンジ・コースという研修に自ら立候補して修了することが条件となっている。本間はこの研修に手を挙げて、その次の年に7年間勤めた経営企画課から川崎支店に移った。久々の営業ライン復帰である。

「まずは内勤営業と聞いていたのに、行ってみたら外回り営業でした。しかも担当エリアは、日本の産業集積地である京浜工業地帯にあり、1人あたりの予算も高く、福岡支店のときの倍近くあり、二重の驚きでした」

7年間のうちに、商品アイテム数や取引メーカーも大幅に増えていた。支店に女性の外回り営業がいるのも珍しくなくなっていた。川崎支店は以前にも女性のセールスがいたので、取引先を回ると「また女性が来たね」と言われた。何の違和感も持たれないことに、時代の変化を感じた。

営業の仕事を思い出しながらも、やはり分からないことが多い。古くから支店と付き合いのある会社からは「そのキャリアで、こんなことも知らないの?」と言われた。こんなことは織り込み済みだ。

「それでも知らないことは知らないので、正直にそう言って教えてもらいました。もちろん同僚からもいろいろ聞けて、ここでも本当に人に恵まれました」

幸い支店長が隣の席だったので、どんな判断をするのだろうとよく観察していた。男性のベテラン支店長で、どんと構えて何かあったときは責任を取るから好きなようにやれという感じだったので、安心して仕事ができた。好景気に恵まれて仕事は忙しく、久々の営業の仕事も楽しかった。ここでもっと頑張ろうと思っていたが、川崎支店配属から1年後、湘南支店に転勤になった。

⇒〈その5〉へ続く

 


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