岩谷産業 近藤功茂
エネルギービジネスで、
〝点〟から〝面〟への戦略を
展開する
入社半年で提携先に派遣、責任を背負って務めを果たす
社会人となって約半年。貪欲にビジネスのルールやマナーを吸収しようとしていた近藤に、思いがけない辞令が下る。担当商材を取り扱う提携先企業への派遣・駐在を命じられたのだ。任務はその商材の共同実証試験に、岩谷産業の代表として参加すること。入社間もない新人が提携先企業に派遣されるというイレギュラーな事態に戸惑いながらも、近藤はがむしゃらに体あたりで乗り込んでいった。
新人でありながら全く勝手の分からない環境に置かれ、自社の責任を負いながら技術検証に明け暮れる日々。しばしば作業服で都内の本社とも往復しながら、双方の主張や情報を取りまとめる交渉にも追われた。
「なぜ、うまくいかないんだ? いつになったらまともな結果が出るんだ」
まだまだ新人の近藤に対しても上司は常に高い要求をした。当然、プレッシャーも大きい。だが負けず嫌いの近藤にとっては、与えられた責任の重さが逆にハードルを突破する原動力となっていった。こうして近藤は提携先でのミッションを1つずつクリアし、技術・エンジニアリング、またその折衝などでも経験値を一気に高めていく。
最初の派遣が1年半ほどで終わると、続いてまた同じ商材で別の提携先へ派遣される。
「他社との提携では、技術者を先方へ出すよう求められることがよくあります。それが私にばかり白羽の矢が立つわけです。人使いの荒い会社だなと思いましたよ(笑)」
〝岩谷産業で技術といえば近藤〟そう呼ばれるよう、今の立ち位置でキャリアを磨いていこう、近藤は徐々にそう考えるようになっていった。こうした思いで技術の仕事に打ち込んでいった。だが入社から数年が経ったころ、その胸の内で新しいモチベーションが燃え広がり始めていた。
当時の近藤が担当していた商材は「マイクロ・コージェネレーションシステム」。略して「マイクロコージェネ」だ。コージェネレーションシステムとは、LNG、LPG、石油などを燃料に発電するシステム。電力会社に支払う料金より、安く電気を調達できるのがメリットだ。それを小口の需要家向けに小型化したのがマイクロコージェネ。当時、岩谷産業ではその設備を調達し、中・小規模の工場、病院、ホテルなどに販売・設置するビジネスを立ち上げる矢先だった。
自分が育ててきたこの商材を、自ら市場に広めたい。近藤がそう思うようになったのも自然な流れだった。その後、技術面での折衝だけでなく、価格面での交渉など営業の仕事も上司に頼んで任せてもらうようになる。そこから次第に営業という新しいフィールドに、自分の大きな可能性を見出し始めた。
「マイクロコージェネも、元は何もなかったところから営業の先輩が商材と市場を見つけて作り出したビジネスです。個々の技術に磨きをかけるのも大事ですが、一方で私もビジネスの全体像に関わってみたい。先輩がそうしたように、自分で絵を描いてビジネスを立ち上げてみたい――。商材を担当して提携先やお客様とやり取りするうち、自然とそのような立ち位置を望むようになりました」
こうして入社から5年目の4月、いよいよ営業に移る辞令が下る。
⇒〈その3〉へ続く