商社の仕事人(33)その1

2017年09月4日

岩谷産業 伊藤俊輔

 

「自分の本当の立ち位置」

見据えながら、

海外との緊密な関係を築く

 

【略歴】
1975年大分県生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)中国語専攻。2000年入社。大学3年の時に1年間留学した中国・南京では、各地の史跡を巡って見聞を広めた。

 

生活と産業を支えるLPガス

「ご承知の通り、シェール革命はLPガス業界にとっても非常に大きなインパクトです。私たちの部隊はいま、いよいよ来年から始める新ソースとしての米国産LPガス輸入に向けて、足下を固めている段階。LPガスのマーケットはこれから需給の両面で大きく変化していくでしょうから、調達の担当としてはこの2~3年が正念場ですね」

LPガス業界にも画期的な転換をもたらしているシェール革命。もちろん国内トップシェアを誇るリーディングカンパニー・岩谷産業も、この新しいマーケットにがっちりとリーチをかけている。そしてその最前線で一役を担うのが、調達本部海外調達部の伊藤俊輔。2000年入社、LPガスの調達・供給ひと筋にキャリアを築き上げてきた購買・供給のプロフェッショナルだ。

LPガスは家庭用プロパンガスから一般工業用、また電力用まで、あらゆる分野で社会を支えているエネルギー。日本はその消費量の約8割を輸入に頼っている。

「当社のような元売りが、産ガス国からLPガスを調達してくるわけです。4万トン級の船で日本へ運び、国内4か所の輸入基地のタンクに貯蔵して、そこから各所に供給という流れですね。この調達と供給の流れを管理コントロールするのが、我々の部隊の役目です」

この一連の業務は、次の2系統に大別される。海外から日本の輸入基地までの「海外市場からの調達」、そして輸入基地から国内各所への「国内市場からの調達と供給」。至上命題は、安定供給を死守すること。そしてもう1つ、物流のロスなどを排除してコストダウンすることだ。

いまは川上の部分でシェールガスをはじめとする「海外調達」に携わる伊藤。そのキャリアの出発点は、川下にあたる「国内供給」の部隊だった。そこでまずエネルギーの調達・供給の何たるかを、みっちりと体得したわけだ。

「輸入基地があるのは鹿島、堺、水島、大分。さらに2次基地が横浜、平田、沖縄にあり、内航船という700トンほどの船で輸入基地からガスを輸送しています。ところが台風が来たりすると、船積みができない。2次基地のタンクスペースはせいぜい4~5日分なので、2日も船が止まればアウトです」

もちろんガスを切らすことは何があろうと許されない。あらかじめリスクを全て想定した上で、供給をコントロールするのが大前提だ。例えば台風以外にも、冬場の日本海は時化やすいため欠航が日常茶飯事。いっぽうで気温が下がるとガスの需要が増え、在庫の減少は一気にスピードアップする。

「在庫がどんどん減るのに船が来ない。こんな状況にピリピリしながら、供給をコントロールするわけです。入社当初は空になったタンクの夢を何度も見ましたよ。夜中に冷や汗をかきながらがばっと起き上がって、『なんだ、夢か』と(笑)」

⇒〈その2〉へ続く

 


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