商社の仕事人(33)その2

2017年09月5日

岩谷産業 伊藤俊輔

 

「自分の本当の立ち位置」

を見据えながら、

海外との緊密な関係を築く

 

「朝8時に行って担当者が来るまで待ち続けろ!」

ロジスティックのプロにとって重要なのは、輸送の手配だけではない。むしろそれ以上に大きな意味を持つのが、同じ業界内での人脈、人間関係作りだ。

「例えば、お客さんによっては基地から離れていることもありますよね。その場合は同業他社、つまりほかの元売りが持っている最寄りの基地と、在庫をジョイントバーターで交換するんです。タンクのガスが切れそうだ、という時もそう。こうすることで、コストを大きく削減できる。つまり同業他社は競合相手であると同時に、我々ロジスティックの人間にとっては助け合う協力相手でもあるわけです」

タンクが切れそうなら、自社の別の基地から運べばいいと思うかも知れない。だがそうすると数千万単位のコストが発生する。これはロジスティックのプロにとって、プライドが許さない非常手段だ。

「どこの基地にいつどれだけガスを回してほしいと、他社の担当者に提案をして交渉する。そうした時にどこまで無理な要求に応じてもらえるかという関係作りが、最終的にコスト管理の決め手になってきます。そのためにはこちらも普段からギブアンドテイクを通じて、相手に信頼されなくてはいけません。『ほかでもない伊藤が言うんなら助けてやろうか』とね。その貸し借りのバランスも考えながら、多くの会社の担当者とフレキシブルな関係を構築していくんです」

入社後すぐ担当を任され、実際の現場で人間関係を築いていった伊藤。だが1~2年目は、やはり先輩、上司から叱責の声が飛ぶこともあった。

「他社さんにお願いしたけど断られたと報告したら、『明日朝一番から先方の会社の前で担当者を待って、もう一度頼み込め!』と(笑)。それで実際に融通してもらったことも何度かあります」

上司の叱責は確かにプレッシャーだが、いっぽうでそれは安心感にもつながった。

「新人の時から現場に放り込まれるわけですが、責任ある業務をただ任せっきりにしているわけではない。問題が起きる前に必ず指摘してくれる、つまりちゃんと後ろでしっかり見てくれているということですから。そうやって実際の現場での教育を通じて、みんな鍛えられていくんです」

⇒〈その3〉へ続く

 


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