商社の仕事人(34)その1

2017年09月18日

ユアサ商事 菅沼知彦

 

転勤のたびに経験を重ねて

新しい商売を身につけていく

 

 

【略歴】
1983年長野県生まれ。専修大学法学部法律学科卒業。2006年入社。大学を1年間休学してフランスに留学し、その途中でトルコに行って地震の被災地で復興のボランティア活動を行う。

 

突然北陸への異動を告げられる

入社2年目を迎えた2007年4月、菅沼知彦は富山の北陸機電部へ異動になることを人事部から告げられた。8年間で海外を含め5か所を渡り歩くことになる「転勤人生」の始まりである。ユアサ商事に入社後、1年目は東京の制御機器部で注文書の発行や納期管理などをしていた。

「何人もの営業担当をバックアップする内勤業務で、各取引先への連絡業務を中心とした事務処理に追われていました。とにかくやることが次から次へと出てくるので、終電で寮に帰る日々が続いて大変でしたね。それでも今思えばこのときに仕事の流れが把握できたし、たくさんこなしたことで自信が持てるようになりました」

2年目には自分も外に出て営業ができると期待していたが、まさか北陸に行くとは予想していなかった。

「北陸機電部の課長が他の拠点に移ることになったための人事異動です。突然の話だし、東京でやるつもりだったので、正直、行きたいとは思いませんでした。ただ課長の後を任されたので、それならがんばってみようかという気になりました」

ユアサ商事の機電本部では、多くの場合ディーラーと呼ばれる地場の卸会社が得意先である。工作機械やその周辺機器、切削工具、搬送装置などが主な商材で、ディーラーを通じて工場などの各エンドユーザーに納められる。

北陸機電部に行くと、上司の部長と菅沼の2人だけで富山、福井、石川の北陸3県をカバーすることになった。ディーラーは建設機械、自動車部品やアルミ建材の製造企業などと取引があり、売上は多くても年商100億円まで、従業員が数十人程度の中小規模の会社ばかりだ。

エリアは広いが、ライバルとなる他の商社と比べて営業人員が少ない。これまでなかなか訪問できていなかったせいか、あいさつに回るとどのディーラーもよそよそしい態度で菅沼を迎えた。

「ああ、新人が来たの。うちはもう用は足りているから」
「どうせ頼むことは変わらないし、わざわざおたくにしなくてもいいよ」

しかも菅沼は、富山に来るまで営業に出たことがほとんどなかった。最初は相手にどう接していいかも分からない。

「かといって足が遠のいてしまったら、もっと疎遠になるだけです。営業のスキルを培ってきたわけではないので、とにかくディーラーさんのためになることは何かを考えて行動するようにしました。自分のことを第一に思ってくれているんだとお客さんが感じてくれるように心がけたのです」

担当する30数社をまんべんなく回ろうとすると、時間がとても足りない。ある程度の売上があり、しかもユアサ商事がシェアを取れていなかったディーラーをリストアップして重点的に通い始めた。

⇒〈その2〉へ続く

 


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