阪和興業 桒田清貴
新エネルギーの世界に
未来を託す
自社で備蓄タンクを持つメリットとは
1人で営業に出るようになると、既存の顧客だけでなく新規開拓も始めるように言われた。工場は規模が大きいところが中心で、A重油やC重油と言われる重油の販売が多い。軽油はバス会社やトラックを使う運送会社に販売するが、これらの会社は規模が比較的小さく、その分数が増える。
営業をかける会社をリストアップし、工場団地をグーグルマップで覗いてみる。始めのうちは、アポイントを取る前に、電話をかけていい相手かどうかを課長や先輩に確認し、かけた結果がどうだったかも毎日報告した。
「新規の営業では、まず阪和ってなに? という感じで、担当者まで取り次いでもらえません。つながったとしても、なんでおたくの話を聞かないといけないの、何社も購買しているのにまた1社増やす必要があるのと言われると、そこから先に中々話が進みません。とはいっても見積もりだけならお金はかからないし、安く買えればメリットはあるわけですから10件に1件はアポが取れました。もっともそこから成約まで進むのは大変でしたが…」
初めて新規の顧客が獲得できたのは、半年ほど経ってからだった。段ボールの箱を製造する工場に電話をすると、本社の購買担当者を教えてくれた。早速電話してみると、幸運にもそのまま成約まで進み、買ってもらえた。実力もなく、まったくタナボタの感じであったが、ツイテいたとしか言いようがなかったと桒田は言う。
「後で聞いてみると、それまで1社からしか買っていなくて、購入先を増やそうかと考えていたところにたまたま私から電話があったのだそうです。当社は千葉の船橋にグループ会社が所有する大きなタンクがあり、そのことも大きな強みでした。タンクにA重油とC重油を備蓄し、原油価格や為替の変動リスクを取れば、一定期間中は固定価格で販売することが可能です。ですからお客様にすれば、当社とは固定価格で契約し、既存の取引先とは原油価格と連動した変動相場条件で取引すれば、その時々で条件のいい方が選べるわけです。これは大きなセールスポイントになります。」
この会社とは現在も取引が続いている。
⇒〈その3〉へ続く