阪和興業 桒田清貴
新エネルギーの世界に
未来を託す
国内から海外へ、次のクリーンエネルギーを探して
今積極的に進めているのは、石油代替燃料としてのRPFの売り込みだ。燃料価格は重油の3分の1に抑えられるので、コスト面のメリットは石炭代替よりもはるかに大きい。
だが石油ボイラーのユーザーは、燃料の購買担当者であってもRPFを知らない場合がほとんどだ。どんなものなのかということから始めて、現状で起きている問題も説明する。石油ボイラーでは燃やせないので、新たなボイラーを導入しなければならない。必要になる投資額やランニングコストの削減による回収の見通しなど、詰めなければならない要素は多い。売り込み始めて1、2か月で決まるというわけにはいかず、2年、3年とかかるのが当たり前だ。
RPFは重油や軽油などと比べれば単価はかなり安いが、利益率は高い。燃料油の商売は口銭が1パーセント以下というのが当たり前だが、RPFは1パーセント前後になり、使う量もそれなりに多い。
だが桒田がRPFを売り込むモチベーションはそれだけではなく、むしろ別のところにある。
「RPFは、埋め立てや焼却で処分していたものを燃料として活用します。化石燃料の使用量を減らして二酸化炭素の排出量を抑え、環境に優しい上に燃料費のコストダウンができるという非常にいい商品です。私は田舎の出身で、都会のビルの中で生活するのが合わない人間です。だから日本の環境が今より少しでもよくなるといいですね。それに化石燃料から脱却するという流れは世界に出ても同じです。化石燃料以外のものをもっと探して、海外でも扱いたいと考えています」
阪和興業の燃料部では、2013年10月新エネルギーチームを新たに発足させた。やはり石油や石炭の代替燃料で、最近広まり始めたばかりのるPKS(椰子殻燃料)を扱い、ほかの新エネルギーにも手を広げていく予定だ。
桒田の所属は今も燃料課だが、非化石燃料の市場を広げていくという任務を負っていることは言うまでもない。工場の現場でクリーンな燃料を少しずつ増やしていくのは地道な活動だが、その一歩一歩は間違いなく地球環境を改善することにつながっている。燃料に限らず、環境に優しい新しい商材は今から次々と出てくるはずだ。
学生へのメッセージ
「国連で働くとなると、途上国を飛び回ることになるという現実が見えてきました。私自身はいいのですが、家族を連れてそんな生活を何年も続けられるのかと自問した結果、企業に入ることにしました。就職活動では、説明会や面接で会った相手を見て、この人となら仕事がしたいと思うような会社を選ぶようにしました。このやり方は間違ってなかったと思います。自分でも会社を選ぶつもりで話をしていただけでしたが、面接で失敗したと思ったことはありません。それぐらいのスタンスで臨むのがいいのかもしれませんね。ただ本当は、私はすごく緊張する質なのですが、そうは見えないようです。大学院でも教授たちが居並ぶ前で発表するとドキドキなのに、君はいつも余裕だねと言われました。そう見えるのも、私にとっていいことかなと思うようにしています」
桒田 清貴(くわた・きよたか)
【略歴】
1984年奈良県生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科修了。2010年入社。京都大学総合人間学部を卒業後、国連に勤務するために神戸大学に移ったが、途中で方向転換をした。
『商社』2015年度版より転載。記事内容は2013年取材当時のもの。
写真:葛西龍