第一実業 飯塚 誠
フロンティアスピリッツを胸に、
海外で活躍
マナウスで開いた新たなビジネスの突破口
マナウスには約30~40社ほどの日系企業が進出しており、各社の駐在員とその家族で100人ほどの日本人コミュニティを形成していた。マナウスに着任した飯塚が最初にしたことは、その日系企業をすべて訪問することだった。
「まずはマナウスにいるすべての日本人に会おうと思って。営業というよりは挨拶回りといった意味合いが強かったです。地球の裏側の小さな街でビジネスを展開しているだけに、みなさん私のことをとても歓迎してくれました。こういうとき、自分が日本人であることのうれしさを感じますね」
10社目あたりだろうか。オートバイのマフラーを製作しているS社を訪問したときのことだった。ひと通りの挨拶を終えてそろそろ帰ろうかと思っていたとき、担当者がこう言った。
「そういえばマフラーの金属部分をプレスする機械を購入しようと思っているのですが、見積もってもらえますか?」
そのS社とは日本でも取り引き実績がなかったが、アプローチをかけなければならない会社のひとつだった。飯塚はもちろんですと答え、どんな機械がほしいのか、どこのメーカーのものがいいのかなど詳しくヒアリング。事務所に帰るとすぐさま日本の担当者に連絡し、その機械の仕様や仕入れ価格など詳しい打ち合わせを重ねた。
後日、その結果を携えて改めてS社の担当者を訪ねた。問題となったのはやはり価格だった。マナウスは免税地区なので、S社が直接日本から機械を輸入した方が安く上がる。金額が大きければ大きいほどメリットは大きい。そもそもそれが日系企業がマナウスに進出している理由だ。事実、S社が過去に他社から同じ規模の機械を購入した価格は飯塚が提示した価格よりも格段に安かった。
「その価格の折り合いをつけるのが一番大変でした。S社の希望価格にするとこちらの利益がなくなってしまいますからね」
商品自体の価格を下げるには限界がある。となるとプラスアルファとして第一実業に何ができるかが大きなポイントとなる。
マナウスで日本人が駐在している商社は第一実業だけ。そのメリットは顧客が来てほしいときに、駐在員がすぐに駆けつけられる点にある。飯塚はそのキメの細かいアフターフォローをプラスアルファのポイントとしてアピールした。その結果、S社の担当者は飯塚の提示した価格で購入してくれた。まさに第一実業の強みを最大限に活かした見事な受注劇だった。
「全体で2,000万円ほどの売り上げですが、金額よりも日本で取り引きのなかった会社がブラジルで当社に2,000万円を払ってくれたこと、そして日本で取り引きのなかった会社とのビジネスの突破口をブラジルで開けたことがとてもうれしかったです」
⇒〈その7〉へ続く