商社の仕事人(43)その5

2018年01月26日

ユアサ商事 日野雄介

 

工作機械ビジネスの

新しいあり方を開拓する

 

 

念願の海外初出張で大型商談を経験する

 2012年4月から、日野はこれまでと同じ部署にいながら直接エンドユーザーに販売する業務に携わるようになった。そのエンドユーザーは自動車部品メーカーで、国内外に工場を展開している。そのうちアメリカに進出している合弁会社が、現地工場の拡張と改修をすることになった。ユアサ商事には4つの生産ラインを任せたいという依頼が来た。この時点で、約3億円のビジネスである。

「エンドユーザーとは前から仕事をしたかったんです。販売店を通してだと現場で何を求められているか本当のところが分からない。直接打ち合わせをする機会がなく、成約しても機械を入れた現場も見られません。海外の仕事も入社したときから熱望していて、上司には常に行きたいと伝えていました」

その両方の願いがかない、6月に上司とメーカー担当者とともにアメリカに飛んだ。そして帰るときには、4ラインの話が10ラインに膨らんでいた。さらに自動倉庫と、鍛造品を研磨する機械のショットブラストも、メーカーから直接買っていたのを今回はユアサ商事にお願いしたいと言われた。

わざわざユアサ商事を間に入れるのには、もちろん理由がある。

「機械を日本からアメリカに輸入すると、税関や輸送のコストが非常に高くなります。しかし単品購入ではディスカウントは難しい。うちは貿易業務は日常的に行っているし、海運業者とのつながりも強いので、その一環として組み込むことができ、コストを抑えられる自信はありました。それにユアサに頼めば、ほかにもいろいろなことがスムーズに進むようになるのです」

その一例として、新しく生産ラインを構成して複数のメーカーの機械を導入するときに、ユアサ商事はすべてのメーカーを紹介できる。しかもユーザーが考える以上の内容の提案をして、コスト交渉もしっかりやってくれる。エンドユーザーとメーカーの間に両方の事情が分かっている商社がいた方が、打ち合わせも滞りなく進むのだ。

「エンドユーザーとしては、調達部門をアウトソーシングしているようなものです。求められる条件は厳しいのですが、今の上司は特にエンドユーザーから信頼されていて、必ずユアサ商事を通してくださいとエンドユーザーから言われるほど、商流の中で存在感を持っています」

⇒〈その6〉へ続く

 


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