岡谷鋼機 斎藤 雅
顧客と仕入先の両方に食い込み、
世界の製造業に貢献
お前はラインを止めるつもりか!
しかし、好事魔多しと言うように、いいことばかりではない。
3年目に入ったときに、これまで多かった機械加工ラインではなく、車両組立ラインの仕事が入ってきた。
自動車の組立ラインはロボットで自動化されている工程が多い。斎藤が仕事を任された工程では車両のドア取り付けを行っており、車両のドアを持つロボット、ドアの取り付け穴の位置を確認するカメラ、ネジ留めするロボットが一体となって稼働していた。ロボットはそのままで、ロボットハンド、カメラ、ネジ締め装置、制御盤を一度に更新することになった。
関わるメーカーは大小5社あり、事前の調整作業量は膨大となった。しかも実際に現場で作業を始めると、想定外の事態が発生した。カメラが想定どおりにドア穴を認識できないのだ。
「お前はラインを止めるのか」とクライアントから言われ、メーカーの担当者たちも困惑を極める。期限が迫る中、斎藤はクライアントと共に昼夜問わず工事の立ち会いを行うことを決意した。
「車両ラインでは中間在庫を持たない場合が多く、ラインの一部停止が、ライン全体に直ぐ影響を与えます。しかも何か問題を解決しようとするたびに、メーカーを何社も呼んで調整しなければなりません。結局、クライアントに勤務シフトを組み直してもらって生産を維持しながら、工事を完了させました」
メーカーの事前準備や慣れないラインで多くのメーカーを組み合わせる難しさもあった。しかし一番の失敗の原因は、自分が調整役として案件を取りまとめることができなかったことだと斎藤は振り返る。
「私がクライアントの生産技術部門や現場部門の関係者、現場自体をよく知っていれば、事前にもっと話が聞けました。メーカー側についても同じです。早めに段取りをし、次の展開をだれよりも早く予測し、打ち合わせに臨む。そのことが、岡谷と取り組めば仕事がスムーズに行く、という信頼につながりますが、このときはそこまで気が回りませんでした」
クライアントや商品について深く知れば知るほど、商社が大きな役割を果たせる可能性が広がる。現在はそのことを常に意識しながら営業を行っている。
⇒〈その5〉へ続く