商社の仕事人(44)その6

2018年02月10日

岡谷鋼機 斎藤 雅

 

顧客と仕入先の両方に食い込み、

世界の製造業に貢献

 

 

海外に広がるメカトロの仕事

斎藤がトレーニー制度でタイの現地法人Siam Okaya Machine & Tool.,Ltd.(SOMAT)に駐在したのは、2010年3月から翌年の3月までである。トレーニーといっても現地で駐在員の業務を経験するだけでなく、タイ人をマネジメントすることも学んできた。

SOMATは2004年に設立したまだ新しい会社で、設備や機械工具類を販売している。

「東京にいたときはクライアントがある程度決まっていましたが、タイでは1年間で1000人近い人と会いました。9割は日系企業で、中にはタイに進出したいという話もあります。工場の新設に伴い、必要となるラインの設備や工具、副資材など、建屋以外のほとんどすべてを幅広く求められ、非常に重宝されました。日本では工場新設は今ほとんどありませんから、貴重な体験です。それに材料や工具は、工作機械のように納入したら終わりではありません。一度受注すると、その後も商材が流れていきます。SOMATが最初に扱って、そのメーカーの商権を継続的に獲得できたケースもあります」

日系企業と言えど、各案件の担当者はタイ人であることが多い。だが斎藤が営業に行ってタイ人と話をしても、なかなか話が通じない。当然、ここはタイ人に活躍してもらわなければならない。

「タイ人は穏やかな国民性ですが、英語だけを使って一方的にこうしろと言っても動きません。最初はタイ語ができませんでしたが、少しずつタイ語で冗談を言ったりするようにしました。打ち解けてきたところで、こういうものを拡販したい、うまくいけばこういうメリットがあるという自分の考えを理解してもらいます。そうして、タイ人同士に商談を任せるところは任せます」

売上を伸ばして利益を出せば、タイ人もボーナスが増える。アイテムによっては、利益の何パーセントをコミッションとして担当者にバックするという制度も提案した。売上は順調に伸び、斎藤が日本に帰国後も事務所は拡張を続けている。

東京本店メカトロ部に戻ってきた今も、斎藤は海外勤務の希望を会社に出している。

「メカトロの仕事はどこでもありますが、現在は海外の需要が圧倒的に多いです。実際にメカトロ本部では設備案件の7割が海外向けです。岡谷鋼機が力を入れているのは、タイ、インドネシア、インド、中国ですが、それ以外にもまだ出ていけていないところを開拓したい。世界中どこでも行きますよ」

骨を埋める覚悟で行かなければ、現地の人からは認められない。タイにいた1年間で得た実感である。この覚悟があれば、海外で新天地を開拓する使命を与えられたときにも斎藤の支えとなるはずだ。

 

学生へのメッセージ

「商社の中でも岡谷鋼機は雰囲気が良い印象を受けました。しかも海外で働く社員も多く、第一志望に決めて、幸い1か月で内定を出してもらえました。私の場合は英語力が1つの武器でした。みなさんにも自分の武器を極めることを勧めます。語学でもいいし、理系の人なら専門分野があるでしょう。そうでなくても、こういうことをやりましたと胸を張って言えるような何かを見つけて、それを伸ばしていけば道は開けます。せっかく行ったからにはタイ語もものにしておきたいので、年2回あるタイ語の語学検定試験にも挑戦し、実力を試しています」

 

斎藤 雅(さいとう・まさし)

1980年神奈川県生まれ。北九州市立大学外国語学部卒業。2004年入社。外国語学部出身なので、英語を使って仕事がしたいというのが商社を志望した動機。大学が北九州市にあり、大阪で就職活動をするために門司港から大阪南港までフェリーに乗った。「フェリーの一番安い料金が5,000円だったので、交通費をかけないために乗っていました」。1週間ビジネスホテルに泊まって就職活動をし、週末には戻ってバイトするという繰り返しだったという。

 

『商社』2014年度版より転載。記事内容は2012年取材当時のもの。
写真:葛西龍

 


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