商社の仕事人(46)その3

2018年02月21日

阪和興業 村田勝彦

 

人が見過ごすところに

商機を見つけ、

世界を相手に実現させていく

 

転勤でインドへの輸出を担当

2009年4月に、村田は大阪から東京の線材特殊鋼国際課に移った。扱う商材は同じだが、転勤と同時に業務内容は国内営業から輸出に変わった。主な担当国はインドである。それまでは輸出どころか海外を担当した経験は一切なかった。

「インドか。インドはな、大変なんや」

先輩からこう言われた意味が分かるまでに、たいして時間はかからなかった。

まず東京に行く前に、これに目を通しておけと渡された書類が何十枚もあった。

「L/C(レター・オブ・クレジット)」と呼ばれる文書や、契約書、仕様書などで、すべて英語で書かれている上に貿易の専門用語が頻繁に出てくる。

貿易に通じた先輩に助けてもらったが、自分の仕事は自分でやるのが阪和の基本。貿易実務も自分で勉強したが、それでも分からないところがたくさんあった。

「仕事のやり方がまったく違うなと思ったのがやり始めた頃の率直な感想です。大阪では注文書を1枚ファックスして、あとは電話でよろしくお願いします、で済みました。商習慣であらかじめ決まっていることも多いし、スピードが第一です。しかし海外では契約がすべて。特にインドはそうでした」

中国や韓国、東南アジアの商談も担当したが、インドの商習慣はほかとは違うと村田は言う。後でそのことを身をもって思い知らされることになる。

中国でも韓国でも、最終的には互いに妥協してこの線で落としましょうという話ができる。

インドではそういう妥協は一切ない。常に自分の主張を通そうとしてくる。

「たとえば信じられないような話ですが、こちらがお金を払ってくださいと言うと、なんで払わないといけないのかというところから話が始まったりします。我々は今お金がなくて困っているから、助けるのが当然だろ、と。もちろん契約書は交わしているので、こちらの主張が正しいのです。しかしあまりにも当たり前のように言ってくるので、一瞬、相手の言うことの方がもっともなのかなと勘違いしそうになる(笑)。最後はぎりぎりのところでお金を払ってもらって事なきを得ましたが、そんな経験をしたこともありました」

⇒〈その4〉へ続く

 


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