阪和興業 村田勝彦
人が見過ごすところに
商機を見つけ、
世界を相手に実現させていく
日系企業でないが故の苦労もあるが
相手はインドの上場企業だ。決算書を見る限り、大変な高利益で年々成長を続けている。
そんな会社がなぜL/Cを開けないのか。とにかく説明を聞かなければと、村田はインドに飛んだ。すると向こうの事情もいろいろと分かってきた。
国全体が大きく発展しているインドでは、常に新技術や新しい機械を導入しないと競争に勝てない。したがって利益はほぼ投資に回す。すると手持ちの現金がなくなり、キャッシュフローがショートしてしまう。その結果、銀行の信用枠が不足し、L/Cを発行してもらえなかったというのだ。
まったくもって生半可な知識だけでは実戦の役に立たないということを身をもって知らされた出来事だった。
「行ったときは、もう人間不信の状態でした。しかし会ってしっかり話をしてみると、相手の社長さんも実はすごく良い人で、遅れた理由にも同情すべき面もあるのですが、こちらも2か月遅れてだいぶ費用もかさんでおり、後には引けません。何とかしてくれと交渉してようやく折り合いをつけることができました」
間もなくL/Cは発行され、予定より遅れたが商品はインドに送られて、どうにか赤字を避けることができた。
「ほかの商社は、日系企業への輸出が大半だと思います。しかし、自分の部署が担当している取引では、すべて現地の会社が相手です。メーカーの人と話しても、さすが阪和さんだねと言われます。ほめているのかそうでないのかは分かりませんが(笑)、これはうちの大きな特徴です。習慣や文化が違う人たちと商売をするのは本当に難しいのですが、その分勉強になる。もっと早く現地に飛んでいれば、と後悔しましたが、良い経験になりました。お陰で、今ではインド人はああ言えばこう言うだろうとシミュレーションができるようになりました」
⇒〈その6〉へ続く