阪和興業 村田勝彦
人が見過ごすところに
商機を見つけ、
世界を相手に実現させていく
2か月待っても、L/Cが来ない
「L/C」についてもう少し説明しておこう。これは輸出する相手国の銀行が発行する信用状の1つで、買い手となる企業の支払いを銀行が保証するというものだ。要するに、もしその企業が取引代金を払えなくなったら銀行が立て替えるのだ。貿易取引の際には、輸入企業の信用度が低かったり、よく分からない場合の支払方法の1つとして輸入先にL/Cの開設を要求するのが一般的だ。
そのL/Cが、約束した期日から2か月経っても送られてこなかった。
東京の国際チームに来て1年半ほど経った頃のことである。取引相手はインド北部のハリヤーナー州にある自動車部品メーカーで、そこには日本からも大手自動車メーカーが進出している自動車産業の集積地だ。
「明日L/Cを開くから待ってくれと、毎日問い合わせをするたびに言ってきて、それが2か月間続きました。仕入先は日本の鉄鋼メーカーで、待って欲しいと言っても製造するのを止めるわけにいきません。ものはできてきてしまう。しかしL/Cなしで出荷したら大変なことになります」
結局、国内の倉庫にものを置く手配をしなければならなかった。
インド向けの貨物船もいったんキャンセルした。その保管料やキャンセル料もかかってくる。
ジェトロ(独立行政法人 日本貿易振興機構)や、知り合いでインドに詳しい人にも相談に行った。すると、ある人からは「ああ、常套手段だね」と言われた。L/Cを開くのが遅いほど、銀行の保証期間が短くなり、その間にかかってくる金利の負担が少なくなるというのだ。
「その方は笑いながら説明してくれましたが、このままでは大赤字になってしまいますからこちらは必死でした。心配しすぎて、体調がおかしくなるのではと思うほどでした(笑)」
⇒〈その5〉へ続く