商社の仕事人(52)その1

2018年04月16日

トラスコ中山 松井 周

 

次代の商流を創り、

会社の強みを売る

 

 

【略歴】
松井 周(まつい・しゅう)
1979年大阪府生まれ。立命館大学経営学部卒。2003年入社。

 

eビジネスという“空中戦”が始まっている

時代とともに、商社の仕事のあり方も変えていかなければならない。トラスコ中山の広島支店で営業を担当する松井周は、今それを身をもって実践しているところだ。

トラスコ中山では、機械工具や物流機器、環境安全用品をはじめとするプロツール(工場用副資材)の売上が8割以上を占めている。自動車や半導体の製造現場、食品工場などといった、日本のモノづくり現場には欠かせないものばかりだ。1900ものメーカーからプロツールを仕入れて、全国各地にある物流センターで在庫をし、納入業者へ商品をスムーズに供給する。その納入業者からモノづくり現場へと商品が流れていく。

松井が今自らに課しているのは、いつもの納入業者ではなく、これまで訪れることがほとんどなかった最終消費現場であるモノづくり現場に足を運ぶことだ。

まだ始めて2か月余りだが、最初はお客様である納入業者からの反発は強かった。トラスコ中山が納入業者を飛ばしてエンドユーザー(モノづくり現場の最終消費者)に直接商品を販売するのではないかという不安があったからだ。

「もちろん納入業者様とはこれからもずっと協働してエンドユーザー様をフォローしていきますし、この商品を売っていきましょうと一緒にエンドユーザー様にアプローチもしていきます。しかし空中戦にたとえられるeビジネスでの決済は、人が介在せず受発注が決済されてしまうように、モノの流れはどんどん変化していきます。そんな環境で商品を売り続けるには、今までの情報収集だけでは足りないんです」

大切なお客様に警戒されてまでもエンドユーザーのもとに通い続ける理由を、松井はこう語る。

トラスコ中山ではeビジネスのひとつの手段として、インターネットで商品の受発注をする独自のシステムを構築している。エンドユーザーがネット上で発注すると、そのデータは納入業者に届き、すべてではないがその多くがトラスコ中山へ注文が入る。そして発注された商品は納入業者を通してエンドユーザーに届き、今まで通りエンドユーザーは納入業者へ代金を支払う。

「eビジネスを介してエンドユーザー様の注文データが直接私たちのところにも入ってくる時代です。これまで通り納入業者様経由で情報を入手するだけでなく、これからはどんどんモノづくり現場から情報を集めなければ、次のビジネスは生まれてきません。本当のニーズはエンドユーザー様のいるモノづくり現場にあります。まずはその情報を収集してから、ニーズに合った提案をしていくべきです」

納入業者からトラスコ中山へ来る発注も、元をたどればエンドユーザーの注文である。だからモノづくり現場のニーズを直接聞くのは当然といえる。だが松井のような動きをしている営業担当者は、トラスコ中山ではまだ少ない。

何が松井をつき動かしているのか。実はトラスコ中山でこれまで7年半営業担当として活動してきた間に、自分がそれまでやってきたことが必ずしも絶対ではないという現実を突きつけられたことがある。その結果、1年間にわたり、お客様との取引に断わりを入れるという辛い経験をしなければならなかったのだ。

だからこそ、今あるビジネスが将来も続くという保証はどこにもなく、たとえ反発があったとしても立ち止まらずに続けなければならないことを、松井はよく知っているのだ。

⇒〈その2〉へ続く

 


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