商社の仕事人(52)その2

2018年04月17日

トラスコ中山 松井 周

 

次代の商流を創り、

会社の強みを売る

 

 

販売先に行ってもまったく相手にされない

松井は2003年4月にトラスコ中山に入社すると、入社後の物流研修のため物流センターであるプラネット東京で商品管理と配達業務についた。1日2便、ペンチ1丁からでも即納するトラスコ中山の物流システムは、競合他社が真似のできない大きな強みである。その物流のしくみや幅広い商品知識を得るために、キャリア職の新入社員はまず物流センターで物流業務を経験するのが通例となっている。

1年後に、HC事業部の岡山支店に配属となる。HCはホームセンターの略で、松井の仕事は日曜大工用の工具材料といったDIY用品、運搬機器、農業・園芸資材などをホームセンターに販売することだ。プラネット東京では、主に工場や建築現場で使われる商品ばかり見てきた。だからホームセンター向けの商品には見慣れないものも多くあった。しかもホームセンターへの営業は、商品と商品を組み合わせた売り場づくりの提案が求められる。それなりの経験とノウハウが必要で、松井は最初の1年間、営業らしい仕事をほとんどすることができなかった。

「セールストークも満足にできず、商品知識もありません。しかもホームセンターの購買担当者の方は売上に繋がる商品かどうかだけが判断基準で、機械工具商の社長のように義理人情での営業は一切通用しない(笑)。

売れる売り場づくりの提案ができない営業マンは相手にされません。私は電話をかけてもアポも取れない状態で、いつも支店長と一緒に回って、商品の陳列や改装時の手伝いをしていました。どの店がどんな商品を入れているか見ておけ、自分なりにどう攻めたらいいか考えておけ、と支店長には言われました。支店長も営業をされてましたし、管理職でもあり、その上に私のお守もしていたので大変だったろうと思います」

このときの岡山支店は、支店長を含めて3名の体制だった。松井以外の2人は50代で、人脈を大切にする営業スタイルで業績を築いていた。それを新人同然の松井が真似しようとしても、なかなかできるものではない。違うやり方で勝負しなければ。松井は心中秘かに期するものがあった。

⇒〈その3〉へ続く

 


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